「会社を作りたいけど、『定款(ていかん)』って言葉をよく聞くけど、一体何なの?」
「会議で『定款ではこうなっている』と話が出たけど、意味がよく分からなくて困った…」
「なんだか法律用語みたいで難しそう…自分にも理解できるかな?」
もしあなたが今、そんな風に「定款」という言葉に対して疑問や不安、あるいは少しの苦手意識を感じているなら、この記事がきっとあなたの強力な味方になります。
ご安心ください。定款は、決して一部の専門家だけが理解できるような難解なものではありません。この記事では、「会社の憲法」とも呼ばれる「定款」について、図解や具体例をたくさん使いながら、日本一わかりやすく、そして徹底的に解説していきます。
この記事を読めば、以下のことがスッキリと、そして具体的にわかります。
- そもそも「定款」とは何なのか、その本当の意味と役割
- 定款にはどんな大切なことが書かれているのか(記載事項のすべて)
- 定款をいつ、誰が、どうやって作るのか(作成から認証までの流れ)
- 株式会社、合同会社、NPO法人など、会社の種類による定款の違い
- 作った後の定款の保管方法や、内容を変更する時の手続き
- 定款に関するよくある疑問とそのスッキリ解決策
読み終える頃には、
「なるほど、定款ってそういうことだったのか!これで自信を持って会社設立や運営の話ができる!」
と、あなたのモヤモヤは解消され、次の一歩を踏み出すための確かな知識が身についているはずです。さあ、一緒に「定款」の謎を解き明かしていきましょう!
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定款とは何か?|その意味と会社運営における重要な役割
定款とは、法人の目的、組織、活動、構成員、業務執行などに関する基本的なルールを定めた文書のことです。
このセクションでは、定款が持つ基本的な意味と、なぜ会社をスムーズに、そして正しく運営していくために定款がこれほどまでに大切なのか、その核心にグッと迫ります。具体的には、以下のポイントを掘り下げていきます。
まずは簡単にポイントをお示ししますね。
- 定款の基本的な意味とは何か
会社を運営するための最も根本的なルールが書かれた「会社の憲法」であり、法的な拘束力を持ちます。 - 定款の目的と必要性は何か
会社の組織運営の土台を作り、関係者(株主、役員、取引先など)の権利や義務を明確にし、社会的な信用を得るために絶対に必要です。
では、詳しくみていきましょう!
定款の基本的な意味|一言でいうと「会社のルールブック」
定款とは、一言でいうと「会社のルールブック」または「会社の憲法」 です。
会社という組織が、どんな目的で、どんなメンバーで、どんな活動をしていくのか、その基本的な約束事をまとめたものが定款なのです。
例えば、会社を形作る上で絶対に欠かせない「大黒柱」となるようなルールが、定款にはっきりと書かれています。具体的には、次のような情報が含まれます。
- 会社は何をするために存在するのか?(会社の目的)
- 会社の名前は何?(商号)
- 会社の住所はどこ?(本店所在地)
- どうやって会社の重要なことを決めるの?(機関設計)
これらの情報が定款によって明確に定められるのです。
会社法における定款の位置づけと法的拘束力
この「会社のルールブック」である定款は、単なる社内的な申し合わせではありません。日本の会社法という法律によって、その作成と内容が厳しく定められており、非常に強い法的な拘束力を持っています。
具体的には、以下の点が重要です。
- 設立時の必須書類
会社を設立する際には、必ずこの定款を作成しなければなりません。これがなければ、会社として法的に認められないのです。 - 会社関係者を拘束
作成された定款は、その会社自身はもちろん、株主(会社にお金を出している人)、役員(会社を経営する人)、そして従業員など、会社に関わる全ての人を拘束します。つまり、定款に書かれたルールは、みんなが守らなければならない約束事なのです。 - 違反行為は無効になることも
もし、定款に違反するような会社の運営や決定が行われた場合、その行為が無効と判断されたり、関係者が法的な責任を問われたりすることもあります。
このように、定款は会社運営の土台となる、法的にも非常に重要な文書なのです。
定款がないとどうなる?|法人設立に不可欠な理由
では、もし会社に定款がなかったら、一体どうなってしまうのでしょうか?
結論から言いますと、定款がなければ、そもそも会社(法人)としてこの世に誕生することができません。
会社法では、株式会社や合同会社といった種類の会社を新しく作るときには、必ず最初に定款を作り、所定の手続き(例えば、株式会社の場合は公証役場という場所で専門家のお墨付きをもらう「認証」という手続き)を踏まなければならない、と定められています。
なぜなら、定款という共通のルールブックがあることで、次のような大きなメリットがあるからです。
- 会社が社会に対して「私たちはこういう組織です」と明確に示せる
- 株主や取引先が安心して会社に関われる(どんな会社か分かるから)
- 会社内部での無用なトラブルを防げる(ルールが決まっているから)
定款の目的と必要性|なぜ会社に定款が必要なのか?
定款が「会社のルールブック」であり、設立に絶対に必要だということはご理解いただけたかと思います。
では、もう少し掘り下げて、定款が具体的にどのような目的で作られ、なぜ会社にとってこれほどまでに必要なのかを見ていきましょう。大きく分けて、次の3つの重要な役割があります。
会社の組織と運営の基本原則を定める
会社は、社長一人で全てを動かせる小さな組織から、何千人もの従業員が働く大きな組織まで様々です。どんな規模の会社であっても、多くの人が関わり、様々な活動を行います。その組織がバラバラにならず、一つの目標に向かってスムーズに、そして効率的に動くためには、みんなが従うべき基本的なルールや原則が絶対に必要です。定款は、まさにその役割を果たします。
定款には、例えば以下のような会社の「骨格」となる情報が定められます。
- この会社は何をするために存在するのか?(事業目的)
- 会社の正式名称は?(商号)
- 会社の本拠地はどこ?(本店所在地)
- 誰が会社の重要な決定をするのか?(取締役会や株主総会などの機関設計)
- お金(資本金)はどうやって集めるのか?(株式に関する事項)
- 会社の1年の区切りはいつ?(事業年度)
これらの基本ルールが定款によってハッキリと決められていることで、日々の会社運営で「これはどうすればいいんだろう?」と迷うことが減り、組織全体が同じ方向を向いて力を合わせることができるのです。
関係者(株主・役員・債権者)の権利義務を明確化
会社には、様々な立場の人が関わっています。主な関係者としては、次のような人々が挙げられます。
- 株主
会社にお金を出資し、会社のオーナーの一員となる人たち。 - 役員(取締役や監査役など)
株主から会社の経営を任された人たち。 - 債権者
会社にお金を貸している銀行や、商品・サービスを提供して代金を受け取る権利のある取引先など。
これらの人たちの立場や会社に対する期待は、必ずしも同じではありません。時には利害が対立することだってあります。
定款は、これら会社に関わる様々な人たちの権利(何ができるか)と義務(何をしなければならないか)を明確に定めることで、無用なトラブルを防ぎ、みんなが安心して会社に関われるようにする大切な役割を担っています。
社会的な信用を得るための基礎となる
定款は、会社の内部ルールであると同時に、会社が社会に対して「私たちはこういう目的で、こういう体制で活動している、ちゃんとした組織ですよ」と示すための公的な文書でもあります。
特に株式会社の場合、設立時に作成する定款(これを「原始定款」といいます)は、公証人(こうしょうにん)という法律の専門家のお墨付き(これを「認証」といいます)をもらう必要があります。そして、その内容は法務局という国の機関に登記される情報の一部にもなります。
このように、一定の手続きを経て作成・管理される定款は、その会社がしっかりとした運営基盤を持ち、法律を守る意識が高いことの証となり、社会的な信用を高めるのに役立つのです。
しっかりとした定款を持っていることは、会社が社会の中で信頼され、ビジネスを円滑に進めていくための大切な土台と言えるでしょう。
会社の名前(商号)を決める際には、縁起を担いで画数を考慮する経営者の方もいらっしゃいます。もしご興味があれば、「屋号・社名(商号)の画数で縁起の良し悪しが変わる?運気が上がる「大吉」字画が丸わかり」の記事も、より良い会社名選びの参考になるかもしれません。

定款には何が書かれているの?|必ず押さえたい記載事項の全体像
「定款が会社のルールブックだってことは分かったけど、具体的にどんなことが書かれているの?」
そんな疑問にお答えするため、このセクションでは定款の具体的な中身、つまり「記載事項」について詳しく見ていきましょう。
定款に書かれる内容は、その重要度や法律上の扱いで、大きく3つの種類に分けられます。それぞれの意味と、どんなことが書かれるのか、そして会社の種類(株式会社、合同会社、NPO法人など)によってどんな違いがあるのかを、分かりやすく解説します。
このセクションで押さえるべきポイントは以下の通りです。
- 定款記載事項の3つの種類
法律上の重要度から「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」に分類されます。それぞれの意味と具体例をマスターしましょう。 - 会社の種類ごとの特徴
株式会社、合同会社、NPO法人など、法人のタイプによって、定款に書くべきことや重視するポイントが異なります。
定款記載事項の種類|絶対的・相対的・任意的記載事項とは?
定款に書かれるたくさんのルール(記載事項)は、法律(主に会社法)によって、その性質や重要性に応じて、次の3つのグループに分けられています。これらの違いをしっかり理解することが、定款という書類の構造を把握し、その法的な力を正しく知るための第一歩です。
表:定款記載事項の3つの種類
種類 | 意味 | 特徴 |
---|---|---|
絶対的記載事項 | 定款に絶対に書かなければならない事項。一つでも欠けると定款が無効になる。 | 会社の根本的な骨格を定める、いわば「会社のID情報」。 |
相対的記載事項 | 書かなくても定款は有効だが、書かないと法的な効力が認められない事項。会社独自のルールを設定する場合に記載。 | 会社の運営方針や株主間の取り決めなど、法律の原則とは異なる定めをしたい場合に活用。 |
任意的記載事項 | 書いても書かなくてもよく、書かなくても法律上当然に効力が認められるか、法律に反しない範囲で自由に定められる事項。 | 会社の運営をよりスムーズにするためや、内部ルールを明確化するために記載。 |
それぞれのグループがどんな意味を持ち、どんな内容が含まれるのか、具体例を交えながら見ていきましょう。
絶対的記載事項とは|これがなければ定款が無効になる最重要項目
絶対的記載事項とは、その名前が示す通り、「絶対に定款に書かなければならない事項」のことです。もし、これらのうち一つでも書かれていなかったり、書かれていても内容が法律の定めに反していたりすると、なんとその定款自体が無効になってしまいます。つまり、会社を設立することすらできなくなってしまう、超重要な項目群なのです。
具体例1:商号(会社の名前)の決め方と注意点
商号(しょうごう)とは、会社の正式な名前のことです。人間でいうところの氏名にあたり、会社を特定し、他の会社と区別するための最も基本的な情報となります。
商号を決めるときには、いくつか守らなければならないルールがあります。主なルールは以下の通りです。
- 使用できる文字
日本の文字(漢字、ひらがな、カタカナ)、アルファベット(大文字・小文字)、アラビア数字(0~9)、そして一部の記号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」)が使えます。 - 会社の種類を示す文字
作る会社の種類に応じて、その種類を示す文字を名前の中に入れなければなりません。(例:株式会社なら「株式会社」、合同会社なら「合同会社」) - 同じ住所に同じ名前の会社は作れない(原則)
同じ本店所在地に、既に登記されている他の会社と全く同じ商号を使うことは原則としてできません。事前に法務局で類似商号調査を行うことが推奨されます。類似商号に関するより詳しい情報は、「会社名、他社と被ったらどうなる?同じ商号はアウト?起業・副業前に知っておくべきルールと調査方法を解説」のページでご確認いただけます。 - 有名企業のマネはNG
あまりにも有名な会社の名前とそっくりな商号を使って、その会社の信用や評判を勝手に利用しようとする行為は、法律(不正競争防止法など)で禁止されています。
定款には、このようにして決めた商号を正確に記載します。
(定款への書き方の例)
第〇条(商号)
当会社は、〇〇株式会社と称する。
具体例2:事業目的の書き方|明確かつ具体的に記載するコツ
事業目的とは、その会社が「何をするために存在するのか」「どんな事業を行うのか」を具体的に示したものです。会社は、原則として定款に書かれた事業目的の範囲内でしか活動することができません。だから、将来行う可能性のある事業も含めて、きちんと考えて記載しておくことが大切です。
事業目的を書くときのポイントは、次の通りです。
- 明確に!
誰が読んでも、どんな事業をする会社なのかが具体的に理解できるように書きます。曖昧な表現や、抽象的すぎる言葉は避けましょう。 - 具体的に!
「〇〇の製造および販売」「△△に関するコンサルティング業務」「□□の企画、制作及び運営」のように、事業の内容を具体的に示します。 - 法律を守って!
もちろん、法律で禁止されている事業や、社会のルールに反するような事業を目的とすることはできません。 - 儲けるため?(株式会社・合同会社の場合)
株式会社や合同会社は、利益を出すこと(営利)を目的とする法人なので、事業目的も基本的には営利を追求するものとなります。 - 許認可は大丈夫?
行う事業によっては、国や都道府県などから特別な許可や認可(許認可)が必要な場合があります(例えば、飲食店なら保健所の営業許可、建設業なら建設業許可など)。許認可が必要な事業を目的として書く場合は、その許認可がちゃんと取れる見込みがあることが前提です。
事業目的は、一つだけでなく複数書くことができます。将来の事業展開も見越して、ある程度の幅を持たせて記載しておくのが一般的です。
(定款への書き方の例)
第〇条(目的)
当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.インターネットを利用した各種情報提供サービス
2.ウェブサイトの企画、制作、運営及び保守
3.前各号に附帯関連する一切の事業
事業計画と密接に関わる事業目的の考え方については、「【テンプレあり】事業の収支計画書の作り方・書き方を解説!目的やメリット、押さえるべきポイントも合わせて紹介します」も参考になるでしょう。

具体例3:本店所在地はどこまで記載する?
本店所在地とは、会社の本店(メインオフィス)の住所のことです。会社の活動の中心地であり、法律上の正式な住所となります。
定款に本店所在地を記載する方法には、主に2つのパターンがあります。どちらを選ぶかで、将来本店を移転するときの定款変更の手間が変わってきます。
表:本店所在地の記載パターン比較
記載パターン | 書き方の例 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
最小行政区画まで | 「当会社は、本店を東京都千代田区に置く。」 | 同じ市区町村内での移転なら、定款変更が不要(登記変更のみでOK)。柔軟性が高い。 | 具体的な場所が定款からは分からない。 |
具体的な番地まで | 「当会社は、本店を東京都千代田区〇〇町一丁目一番一号に置く。」 | 定款だけで具体的な場所が分かる。 | 少しでも場所が変わると定款変更(株主総会の特別決議)が必要。手間とコストがかかる。 |
一般的には、将来の移転のしやすさを考えて、「最小行政区画まで」(市町村や東京23区の場合は区まで)の記載とするケースが多いです。こうしておけば、同じ市区町村内で引っ越す場合には、面倒な定款変更の手続きが不要になるからです。
本店所在地としてバーチャルオフィスの住所を利用することも可能です。

バーチャルオフィスを利用した開業届の提出や法人登記については、「【記入例あり】バーチャルオフィスは開業届の提出・登記に使える!届出書への納税地・住所の書き方を解説」や「バーチャルオフィスで起業・法人登記するメリットとは?デメリットや注意点についても詳しく解説」で詳しく解説しています。
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具体例4:設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金など)
これは、会社を設立するときに、発起人(ほっきにん:会社を最初に作る人たちのこと)が会社に出すお金や財産の合計額、またはその最低ラインを指します。株式会社の場合は、これが会社の「資本金」の基礎となります。
昔は、「株式会社を作るには資本金が1000万円以上必要」といったルールがありましたが、今はそのルールはなくなりました。法律上は、資本金1円でも株式会社を作ることができます。
しかし、資本金の額は、会社の体力や信用度を示す一つの目安にもなるため、これから始める事業の規模や計画に合わせて、適切な額を設定することが大切です。
具体例5:発起人の氏名または名称および住所
発起人(ほっきにん)とは、会社の設立を企画し、その手続きを実際に行う人のことです。発起人には、個人だけでなく、既に存在する他の会社(法人)もなることができます。
定款には、会社設立に関わる全ての発起人の氏名(法人の場合は正式名称)と、その住所を正確に記載する必要があります。これは、誰が責任を持って会社を設立したのかを明確にするための、非常に重要な情報です。
発起人は、設立時に作成する原始定款に、自分の名前を書いてハンコを押すか(署名または記名押印)、電子定款の場合は電子署名をする必要があります。
相対的記載事項とは|定めなければ効力がないが、任意で記載できる項目
相対的記載事項とは、必ずしも定款に書かなければならないわけではないけれど、もしその事項について会社としての正式なルールとして法的な効力を持たせたい場合には、定款に書いておかなければならない事項のことです。
つまり、定款に書かれていなければ、たとえ関係者の間で口約束や別の書類で合意があったとしても、法律上の正式な会社のルールとしては認められない可能性がある、というものです。
具体例:役員の任期、株式譲渡制限、株主総会の招集通知期間など
相対的記載事項には、会社の運営をスムーズにするための様々な取り決めが含まれます。代表的な例としては、以下のようなものがあります。
- 株式の譲渡制限に関する規定
株式会社の株式は、原則として誰でも自由に売買(譲渡)できます。しかし、特に中小企業などでは、「会社の株が知らない人に渡ってほしくない」と考えることが多いです。そのような場合に、「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会(または株主総会)の承認を得なければならない」といったルールを定款に定めることができます。これを定めることで、会社の経営に関わる人をある程度コントロールできるようになります。 - 役員の任期
会社の経営を行う取締役の任期は、法律で原則2年(会社をチェックする監査役は原則4年)とされています。しかし、株式の全てに上記の譲渡制限が付いている会社(非公開会社といいます)では、定款でこの任期を最長10年まで延ばすことができます。役員が頻繁に変わらない会社であれば、任期を延ばすことで、役員変更の手続きや登記の手間を減らすことができます。 - 株主総会の招集通知期間の短縮
会社の重要なことを決める株主総会を開く際には、原則として会議の日の2週間前までに株主に「会議を開きますよ」というお知らせ(招集通知)を送らなければなりません。しかし、これも非公開会社で取締役会を置いていない場合など、一定の条件を満たせば、定款でこの期間を短縮することができます(例えば1週間にするなど)。 - 取締役会や監査役などの機関設置
会社法では、必ず置かなければならない機関(株主総会など)と、会社の判断で任意に置くことができる機関(例えば、会計参与や監査等委員会など)があります。任意とされている機関を会社に設置する場合には、その旨を定款に記載する必要があります。 - 現物出資(げんぶつしゅっし)
会社設立時に、お金(金銭)ではなく、不動産、車、パソコン、特許権といった「モノ」や「権利」で出資をすることもできます。これを現物出資といいます。現物出資をする場合には、その旨と、誰が何を出資するのか、その財産の内容や評価額などを定款に記載する必要があります。
これらの相対的記載事項は、会社の規模、事業内容、経営戦略などに応じて、必要なものを選択し、定款に盛り込んでいくことになります。
任意的記載事項とは|会社の任意で自由に記載できる項目
任意的記載事項とは、定款に書いても書かなくても、定款自体の有効性には影響せず、また、たとえ定款に書かなくても法律上当然に効力が認められる事項や、法律の基本的なルールに反しない範囲であれば、会社が自由に定めても良い事項のことです。
つまり、必ずしも定款に書く必要はないけれども、「会社の運営ルールとして明確にしておきたいな」「社員や社外の人にも私たちの会社の方針として示しておきたいな」といったことを記載するものです。これらを定めることで、会社の運営方針をより具体的にしたり、日々の業務をスムーズに進めたりするのに役立ちます。
具体例:事業年度、役員報酬の規程、定時株主総会の開催時期など
任意的記載事項には、会社の運営を円滑にするための様々なルールが含まれます。具体的には、以下のようなものがあります。
- 事業年度
会社の会計期間、つまり「いつからいつまでを1年間の区切りとして会社の成績(決算)をまとめるか」という期間です。例えば、「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする」といった形で定めます。これは定款に書かなくても、会社設立後に決めることができますが、会社の基本的な情報として定款に記載する会社が多いです。 - 定時株主総会の開催時期
年に一度、必ず開かなければならない定時株主総会を、いつ頃開催するかを定めるものです。例えば、「当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3ヶ月以内に招集する」といった形です。 - 役員の員数(人数)
会社の経営を行う取締役や、会社をチェックする監査役などを、具体的に何人置くかを定めるものです。例えば、「当会社の取締役は3名以上とする」といった形です。会社法で定められている最低人数(例えば、取締役会を置かない会社なら取締役1名以上)を満たしていれば、具体的な人数は会社が自由に設定できます。 - 役員報酬の決定方法
役員のお給料(報酬)やボーナス(賞与)などを、どのようにして決めるかを定めるものです。例えば、「役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、株主総会の決議によって定める」といった形です。具体的な金額まで定款に書いてしまうと、報酬を変えるたびに定款変更が必要になって大変なので、通常は「どうやって決めるか」という方法だけを定めることが多いです。 - 公告方法(こうこくほうほう)の具体的な媒体
会社が法律で定められた事項を世間に知らせる(公告する)際に、どの媒体を使うかを定めるものです。公告方法には、国の新聞である「官報」に載せる方法、日刊新聞紙に載せる方法、会社のウェブサイトに載せる「電子公告」という方法があります。電子公告を選択する場合は、そのウェブサイトのアドレス(URL)を定款に記載する必要があります。
これらの任意的記載事項は、会社の運営をよりスムーズにしたり、社内のルールを明確にしたりするために役立ちます。ただし、どんなことを書いても良いというわけではなく、法律の基本的なルール(特に強行規定と呼ばれる、絶対に守らなければならないルール)に反するような内容を定款に書いても、その部分は無効になってしまいます。
【法人格別】定款記載事項のポイント|株式会社・合同会社・NPO法人の違い
これまで説明してきた定款の記載事項は、主に多くの人がイメージする「株式会社」を念頭に置いたものでしたが、実は法人の種類(法人格)によって、定款に書くべきことや、特に重要となるポイントが少しずつ異なります。
ここでは、代表的な法人格である「株式会社」「合同会社」「NPO法人」を取り上げ、それぞれの定款にはどんな特徴があるのか、比較しながら見ていきましょう。ご自身が設立を考えている、あるいは既に関わっている法人の種類に合わせて、特に注意すべき点を把握しておくことが大切です。
表:法人格別の定款記載事項の主なポイント
比較ポイント | 株式会社 | 合同会社(LLC) | NPO法人(特定非営利活動法人) |
---|---|---|---|
設立時の認証 | 公証人の認証が必要 | 不要 | 所轄庁の認証が必要 |
意思決定機関 | 株主総会が最高意思決定機関。取締役会を設置することも多い。 | 原則として社員全員が業務執行権を持ち、社員の同意で意思決定。定款で別段の定めも可能。 | 社員総会が最高意思決定機関。理事会を設置することも多い。 |
出資者と経営者 | 原則として分離(所有と経営の分離)。出資者は株主、経営者は取締役。中小企業では一致も多い。 | 原則として一致(出資者=社員が業務も執行)。 | 会費を払う社員(正会員)と、運営を担う役員(理事・監事)で構成。役員は社員総会で選任。 |
利益の分配 | 株主に配当として分配可能。 | 社員に利益を分配可能。分配割合は定款で自由に定められる。 | 社員への利益分配は不可(非営利目的のため)。余剰金は翌年度の活動資金に充てる。 |
定款の自由度 | 会社法で比較的厳格に規定。 | 内部自治の自由度が高い。社員間の合意を重視。 | 特定非営利活動促進法(NPO法)で厳格に規定。公益性・非営利性を担保するための制約が多い。 |
絶対的記載事項の例 | 商号、目的、本店所在地、設立時出資財産価額、発起人氏名・住所など。 | 商号、目的、本店所在地、社員全員の氏名・住所、社員全員が有限責任社員であること、社員の出資目的・価額など。 | 目的、名称、事務所所在地、社員の資格得喪、役員、会議、資産、会計、事業年度など、NPO法で詳細に規定。 |
株式会社の定款|株式や株主総会に関する規定が中心
株式会社は、多くの人が少しずつお金(株式)を出し合って資金を集め、そのお金を使って事業を行う、日本で最も一般的な会社形態です。
そのため、株式会社の定款では、
- 「株式」に関するルール
どんな種類の株をどれだけ発行できるか、株を他の人に譲るときのルールなど - 会社のオーナーである株主が集まって重要なことを決める「株主総会」に関するルール
いつ、どこで、どうやって開くか、何人で決めれば決定となるかなど
が、特に重要な内容となります。
また、会社がどれだけのお金(資本金)でスタートするのか、会社の名前(商号)や事業内容(目的)、本社の場所(本店所在地)なども、絶対に書かなければならない事項(絶対的記載事項)として定められています。
合同会社の定款|社員の権限や利益配分などが重要
合同会社(ごうどうがいしゃ、LLCとも呼ばれます)は、株式会社に比べると、設立の手続きが少し簡単で、会社内部のルールを比較的自由に決められるという特徴があります。
合同会社では、お金を出資する人も、会社の経営を行う人も、基本的には同じ「社員」と呼ばれる人たちです(株式会社でいう「株主」と「取締役」が一体化したようなイメージです)。そのため、合同会社の定款では、
- 「社員」に関するルール
誰が社員なのか、それぞれの社員がどんな権限を持つのか、会社を代表するのは誰かなど - 会社で得た利益を社員にどうやって分けるか(利益の配当)に関するルール
などが、特に重要なポイントになります。
株式会社と大きく違うのは、利益の配当割合を、出資した金額の割合だけでなく、それぞれの社員の貢献度などに応じて自由に決められる点です。また、会社の重要な決定も、社員全員の話し合いで決めるのが基本ですが、定款で「この人(業務執行社員)に任せる」と決めることもできます。
NPO法人の定款|特定非営利活動促進法に基づく特有の記載事項
NPO法人(エヌピーオーほうじん、特定非営利活動法人ともいいます)は、利益を出すことを一番の目的とせず、社会貢献活動や地域の問題解決など、法律で定められた20分野の「特定非営利活動」を行うことを目的とする法人です。
NPO法人の設立や運営は、「特定非営利活動促進法(NPO法)」という特別な法律に基づいて行われます。そのため、NPO法人の定款には、このNPO法に沿った、株式会社や合同会社とは異なる特有の記載事項が多く求められます。
NPO法人の定款の主なポイントは、
- NPO法で定められた絶対的記載事項が非常に多い
- どんな社会貢献活動をするのか(目的)
- 法人の名前(名称)
- 事務所の場所(事務所の所在地)
- 誰がメンバー(社員=正会員)になれるのか、どうやって入ったり辞めたりするのか(社員の資格の得喪に関する事項)
- 運営の中心となる役員(理事や監事)の人数や任期、選び方(役員に関する事項)
- 重要な会議(社員総会や理事会)の開き方や決め方(会議に関する事項)
- 財産の管理や会計のルール(資産・会計に関する事項)
- もしNPO法人が解散することになったら、残った財産をどうするか(解散に関する事項)
- 所轄庁の認証が必要
NPO法人を設立するには、株式会社の公証人認証とは異なり、その法人が活動する地域の都道府県知事や指定都市の市長など(これを「所轄庁」といいます)のお墨付き(認証)が必要です。定款は、この認証を受けるための最も重要な書類の一つです。 - 情報公開の義務が重い
NPO法人は、その活動の透明性を保つために、事業報告書や会計報告書だけでなく、定款も事務所に備え置き、メンバーや利害関係者が見たいと求めたときには見せたり、インターネットで公開したりする必要があります。
NPO法人の定款は、その法人が本当に非営利で公益のために活動する組織であることを担保するためのルールがたくさん盛り込まれているのが特徴です。通常は、所轄庁が用意している定款のひな形を参考にして作成します。
社会福祉法人の設立に関心がある方は、「社会福祉法人設立は本当に難しい?リアルな難易度と成功の秘訣をわかりやすく徹底解説します」の記事も参考になるかもしれません。
その他にもおすすめバーチャルオフィスはたくさんあるのですが、上記3つが個人的鉄板です。
バーチャルオフィスの一般的な選び方のポイントや、その他のおすすめサービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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定款はいつ・誰が・どうやって作るの?|作成から認証までの流れ
「定款の重要性や中身はだいたい分かったけど、じゃあ実際に、定款っていつ、誰が、どんな風に作るものなの?」
そんな疑問が湧いてくる頃ではないでしょうか。
定款の作成は、特に新しい法人(会社やNPO法人など)を立ち上げるプロセスにおいて、まさに中心となる作業の一つです。
ここでは、定款を作るタイミングから、誰が作るのか、そして具体的な作り方のステップ、さらに株式会社の場合には必ず必要となる「公証役場での認証」という手続きまで、一連の流れを分かりやすく解説していきます。
簡単にポイントに触れつつ、この後詳しく説明しますね!
- 定款を作るタイミングと作る人
主に法人の設立時に、その法人を最初に作ろうとする「発起人」や「設立時社員」と呼ばれる人たちが作ります。 - 具体的な作り方
定款のひな形(テンプレート)を参考にしながら自分で作る方法と、行政書士などの専門家に依頼する方法があります。 - 認証って何?
株式会社を設立する場合には、作った定款が法律的に正しいものであることを、公証役場の専門家(公証人)に証明してもらう「認証」という手続きが必要です。
定款作成のタイミングと作成者|主に会社設立時に発起人が作成
定款が最も効力を発揮する瞬間、それは法人の「誕生時」、つまり設立のときです。
新しい会社を作ろうとするとき、あるいはNPO法人を立ち上げようとするとき、まず最初に「どんな法人にするか?」という設計図を描きます。その設計図こそが、定款なのです。
では、その大切な定款は誰が作るのでしょうか? これは、設立する法人の種類によって、少し呼び方が変わります。
- 株式会社の場合
発起人(ほっきにん)と呼ばれる人たちが作ります。発起人とは、「よし、この会社を作ろう!」と最初に言い出し、設立のための様々な手続きを進める人(または法人)のことです。発起人は一人でも大丈夫です。 - 合同会社の場合
設立しようとする社員の人たちが共同して作ります。合同会社では、出資する人も経営する人も基本的には同じ「社員」なので、その社員になろうとする人たちが定款を作ります。 - NPO法人の場合
設立当初の社員(正会員)になろうとする人たちが中心となって作ります。NPO法人の活動に賛同し、メンバーとして関わろうとする人たちが集まって定款を作り上げていきます。
つまり、「これから新しい法人という船を造って、大海原に漕ぎ出そう!」という情熱を持った人たちが、その船の設計図として、最初に魂を込めて作り上げるのが定款というわけです。
原始定款と現行定款の違いとは?
定款には、作られるタイミングや状態によって、ちょっと専門的な呼び分けがあります。「原始定款(げんし ていかん)」と「現行定款(げんこう ていかん)」です。どちらも「定款」ですが、意味合いが少し違います。
両者の違いを表形式でまとめたので見てみましょう!
表:原始定款と現行定款の比較
比較ポイント | 原始定款 | 現行定款 |
---|---|---|
いつ作る? | 法人設立時に一番最初に作られる定款。 | 法人設立後、必要に応じて変更が加えられ、今現在、効力を持っている最新版の定款。 |
誰が作る? | 発起人や設立時社員。 | 会社(株主総会などで変更決議)。 |
認証は? | 株式会社の場合、公証人の認証が必須。これがなければ法的に無効。 | 変更内容によっては法務局への登記変更が必要だが、その都度公証人認証は不要。 |
変更できる? | 原則として、認証後は簡単には変更できない。設立登記前に変えたいなら再認証など大変。 | 株主総会などの正規の手続きを経れば、変更可能。 |
役割のイメージ | 「生まれたときの設計図」「会社の戸籍謄本」 | 「成長や変化に合わせてアップデートされた最新の設計図」 |
簡単に言うと、
- 原始定款
まさに会社が産声をあげるときに作られる、たった一つのオリジナルの定款です。「私たちはこういう会社として生まれます!」という宣言書のようなものです。 - 現行定款
会社が成長していく中で、「やっぱりここのルールを変えたいな」「新しい事業を始めたいから、目的を追加しよう」といった具合に、株主総会などで正式に変更が認められた、最新版の定款のことです。会社に保管され、株主などが見たいと言ったときに見せるのは、この現行定款です。
定款作成の具体的な方法|自分で作成する場合と専門家に依頼する場合
さて、いよいよ「定款を作るぞ!」となったとき、具体的にどうやって作ればいいのでしょうか?
方法は大きく分けて2つあります。
- 自分で作成する
- 専門家(行政書士や司法書士など)に依頼する
どちらが良いかは、あなたの法律知識のレベル、使える時間、予算などを考えて決めることになります。
ここでは、①をベースに進めるとして、テンプレートの探し方や作り方についてみてみましょう。
かしこまりました。出典箇所に具体的なURL(または検索クエリの例)を付与し、読者が直接情報源にアクセスしやすくします。
ただし、法務局や都道府県のNPO担当部署のURLは地域によって異なるため、一般的なトップページや検索例を提示する形になります。
定款のひな形・テンプレートの探し方と活用時の注意点
定款を一からすべて自分で作るのは大変な作業です。そのため、多くの場合、定款のひな形(テンプレート)を参考にしながら作成することになります。これはいわば「定款のサンプル」で、基本的な骨組みがあらかじめ書かれています。
ひな形は、インターネットなどで比較的簡単に見つけることができます。主な情報源としては、以下のようなものが挙げられます。
- 公的機関のウェブサイト
- 法務局
(出典:法務局ウェブサイト 各管轄法務局の商業・法人登記関連ページ)
株式会社や合同会社の設立登記に関するページで、定款の記載例が見つかることがあります。「〇〇(地域名) 法務局 会社設立 定款」などで検索してみてください。 - 日本公証人連合会
(出典:日本公証人連合会公式ウェブサイト 定款認証関連ページ)
株式会社の定款認証に関する情報の中で、モデル定款が提供されていることがあります。 - NPO法人の場合、都道府県や市のウェブサイト
(出典:各都道府県・政令指定都市・中核市のNPO法人所管部署のウェブサイト。例:東京都生活文化スポーツ局(NPO法人ポータルサイト))
NPO法人を所管する部署が、詳しい定款のひな形や作成の手引きを公開しています。「〇〇(都道府県名/市町村名) NPO 定款 ひな形」のように検索すると見つけやすいでしょう。
- 法務局
- 専門家のウェブサイト
(参照すべきサイト:各行政書士事務所・司法書士事務所の公式ウェブサイト)
多くの行政書士や司法書士の事務所が、サービスの一環として無料の定款ひな形をダウンロードできるようにしています。事務所名や「定款 ひな形 無料 行政書士」などで検索してみてください。 - その他
- NPO法人を支援する民間のセンターや団体など
(出典:各支援団体の公式ウェブサイトや発行資料)
役立つ情報やひな形を提供していることがあります。地域のNPO支援センターなどに問い合わせてみるのも良いでしょう。(例:「日本NPOセンター」などで検索) - 会社設立や起業に関するビジネス書
(出典:市販のビジネス関連書籍)
定款のサンプルが掲載されていることがあります。書店やオンライン書店で最新版の書籍を探してみましょう。
- NPO法人を支援する民間のセンターや団体など
ただし、ひな形を使うときには、いくつか注意点があります!
- 情報の新しさをチェック!
法律は時々変わります。古いひな形をそのまま使うと、今の法律に合わない可能性があります。できるだけ最新のものを探しましょう。 - あなたの会社に合わせてカスタマイズ!
ひな形はあくまで一般的なサンプルです。あなたの会社の事業内容、規模、運営方針に合わせて、必要な部分を書き換えたり、追加したりする必要があります。「絶対的記載事項」は必須ですが、「相対的記載事項」や「任意的記載事項」は、あなたの会社にとって本当に必要か、どんな内容にするかをよく考えて決めましょう。 - 法人格に合ったものを選ぼう!
株式会社を作りたいのに合同会社のひな形を使ったり、その逆だったりすると、全く意味がありません。必ず、設立したい法人の種類に合ったひな形を選んでください。 - 一つだけでなく、いくつか見比べてみよう!
可能であれば、複数のひな形を見比べて、それぞれの良いところを取り入れたり、自分の会社に一番合いそうなものを選んだりすると、より良い定款が作れます。
電子定款と紙定款の違い|メリット・デメリットと作成費用
定款の作り方には、伝統的な「紙の定款」と、最近主流になりつつある「電子定款」の2つのスタイルがあります。どちらを選ぶかによって、作り方、必要なもの、そして費用が少し変わってきます。
両者の違いは以下の表のとおりです。
表:紙定款と電子定款の比較
比較ポイント | 紙定款 | 電子定款 |
---|---|---|
どんな形? | A4の紙などに印刷し、発起人(または社員)全員が名前を書いてハンコを押す(署名または記名押印)。通常3通作成。 | PDFファイルなどの電子データとして作成し、発起人(または社員)全員が「電子署名」というデジタルのハンコを押す。 |
認証時の印紙代(株式会社の場合) | 40,000円 (収入印紙を貼る必要がある) | 0円 (収入印紙が不要!) |
作成に必要なもの(例) | パソコン、プリンター、紙、ハンコ(実印など) | パソコン、PDF作成ソフト、マイナンバーカード(または電子証明書)、ICカードリーダーライタ、専用の署名ソフトなど |
公証役場での手続き | 作成した紙の定款を持参し、公証人が内容を確認して認証のハンコなどを押してくれる。 | 作成した電子定款のデータを公証役場に送り、公証人が電子的に認証してくれる。認証済みのデータ(CD-Rなど)がもらえる。 |
メリット | 特別な機械やソフトがなくても作りやすい。昔ながらの方法で安心感がある。 | 何といっても印紙代4万円が節約できるのが最大の魅力! 遠くの公証役場でもオンラインで認証申請ができる場合がある。データの保管や共有がしやすい。 |
デメリット | 印紙代が高い。紙なので保管場所を取る。紛失のリスク。遠方の発起人がいるとハンコをもらうのが大変。 | 電子署名のための環境を整えるのに、少し手間や初期費用がかかることがある(特に初めての場合)。ある程度のIT知識が必要。 |
株式会社を設立する場合、電子定款を選ぶ一番大きなメリットは、何といっても収入印紙代の40,000円がまるまる節約できることです。
ただし、電子定款を作成して、そこに「電子署名」というデジタルのハンコを押すためには、
- マイナンバーカード(カードの中に電子証明書というデータが入っています)か、法務局が発行する商業登記に基づく電子証明書など
- マイナンバーカードなどを読み込むためのICカードリーダーライタという機械
- PDFファイルを作成・編集できるソフト(Adobe Acrobatなど、署名機能が付いているもの)
- 法務省が提供している申請用ソフトや、公証役場が指定する特別なソフト(プラグインソフト)
といったものが必要になり、これらを揃えるのにお金がかかったり、設定に手間取ったりする可能性があります。
「自分で電子定款を作るのはちょっと難しそう…」と感じる場合は、行政書士などの専門家にお願いすることもできます。専門家はこれらの環境を全て整えているので、スムーズに電子定款の作成から認証手続きまでを代行してくれます(もちろん、専門家への報酬は別途かかります)。
電子定款作成のメリット:印紙代4万円が不要になるケース
もう一度、大切なことなので繰り返します。
株式会社を設立するときに作る最初の定款(原始定款)を、紙ではなく「電子定款」というデジタルの形で作って、公証役場の専門家(公証人)に「これでOKです」というお墨付き(認証)をもらう場合、通常、紙の定款なら貼らなければならない40,000円の収入印紙が、法律で「不要」と定められています。
ただし、注意点があります。合同会社やNPO法人の定款は、もともと株式会社のような公証人の認証という手続きがなく、収入印紙も必要ありません。ですから、この「印紙代4万円節約」のメリットは、主に株式会社を設立する場合に限られるということを覚えておいてください。
定款の認証手続きとは?|公証役場での認証が必要な法人格と流れ
定款の認証(にんしょう)とは、簡単に言うと、「あなたが作った会社の定款は、ちゃんと正しい手続きで作られましたね。内容も法的に問題なさそうですね」ということを、公証人(こうしょうにん)という法律の専門家が公式に証明してくれる手続きのことです。
でも、全ての法人の定款が、この認証手続きを受けなければならないわけではありません。
定款認証が必要なのは主に株式会社|合同会社などは不要
法律で「定款の認証を受けなさい」と義務付けられているのは、主に「株式会社」を設立する場合です。
会社法という法律の第30条第1項に、「株式会社の設立に際して作成する定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」とハッキリ書かれています。

つまり、株式会社は、定款を作っても公証人のお墨付きがなければ、法的には定款として認められない(無効)ということなのです。
これに対して、
- 合同会社(LLC)
- 合名会社
- 合資会社
といった、株式会社以外の持分会社(もちぶんがいしゃ)と呼ばれる種類の会社や、
- NPO法人(特定非営利活動法人)
- 一般社団法人・一般財団法人
といった公益的な法人などでは、設立するときの定款について、株式会社のような公証人の認証は法律で求められていません。
ですから、「定款認証」という言葉が出てきたら、それは「ああ、株式会社を作るときの話だな」と、まずは考えていただいて大丈夫です。
公証役場での認証手続きの流れと必要書類・認証費用
では、株式会社の定款認証は、具体的にどこで、どんな流れで行われるのでしょうか?
認証手続きは、設立する会社の本店(メインオフィス)の所在地を管轄する法務局または地方法務局のエリア内にある「公証役場(こうしょうやくば)」という場所で行います。公証役場には、公証人という法律の専門家がいます。
手続きの大まかな流れは、次のようになります。
- 定款の原案を作る
まず、発起人(会社を最初に作る人)が、会社のルールとなる定款の案を作成します。 - 公証役場に事前チェックをお願いする(推奨)
いきなり本番に臨むのではなく、作成した定款案を事前に公証役場に持って行ったり、FAXやメールで送ったりして、内容に法的な不備がないかなどをチェックしてもらうのがおすすめです。多くの公証役場がこの事前チェックに応じてくれます。ここでOKが出れば、認証を受ける日時を予約します。 - 必要な書類を揃える
公証役場から指示された書類を準備します。主なものは以下の通りです。- 定款
紙の定款の場合は通常3通(公証役場が保管する分、会社が保管する分、設立登記の申請に使う分)。電子定款の場合は、電子署名済みの電子データ。 - 発起人全員の印鑑証明書
発行から3ヶ月以内のもの。 - 発起人が法人の場合
その法人の登記事項証明書と代表者の印鑑証明書。 - 実質的支配者となるべき者の申告書
近年、マネーロンダリング防止などの観点から必要になった書類です。会社の意思決定に大きな影響力を持つ人が誰なのかを申告します。 - 委任状
発起人本人が公証役場に行けず、代理人(例えば行政書士など)が手続きをする場合。 - その他、公証役場から個別に指示された書類。
- 定款
- 公証役場で認証を受ける
予約した日時に、発起人(または代理人)が公証役場に出向き、公証人の目の前で定款の内容を確認し、公証人が「この定款は正しく作られました」という認証を行います。- 紙の定款の場合
公証人が定款に認証文というお墨付きの文章を付け、公証役場の印鑑を押して、発起人に2通(会社保存用と登記申請用)を返してくれます。 - 電子定款の場合
公証人が電子データに「電子認証」というデジタルの証明を行い、認証済みの電子データ(通常はCD-Rなどのメディアに入れて)を渡してくれます。
- 紙の定款の場合
- 認証手数料などを支払う
公証人に支払う手数料は、法律で決まっており、一律50,000円です(会社の資本金の額などによって変わることはありません)。これに加えて、紙の定款の場合は、定款の謄本(写し)代として、1ページあたり250円程度の費用が別途かかります。
定款の閲覧・保管・変更はどうする?|知っておくべき管理方法
「定款が無事に完成した!認証も受けたぞ!」
これで一安心…と言いたいところですが、定款との付き合いは、会社が存続する限り続きます。
定款は、一度作ったら金庫にしまいっぱなし、というわけにはいきません。会社を運営していく中で、その内容を確認したり、大切に保管したり、時には時代の変化や会社の成長に合わせて、内容をアップデート(変更)したりする必要が出てくるのです。
ここでは、設立後の定款とどう付き合っていくのか、つまり「定款の閲覧」「定款の保管」「定款の変更」という3つの大切なポイントについて、分かりやすく解説します。
例によって簡単に概要を押さえつつ、詳細に移りましょう!
- 定款の閲覧
株主や会社の債権者(お金を貸している人など)は、会社の定款を見せてもらう権利を持っています。 - 定款の保管
会社は、作った定款を本店(メインオフィス)や支店にきちんと備え置く義務があります。 - 定款の変更
会社の事業内容を変えたり、本店を移転したりする場合など、定款の内容を変えるには、原則として株主総会で特別な多数決(特別決議)が必要です。
定款の閲覧方法|誰でも定款を見れるのか?
会社の定款は、その会社の最も基本的なルールブックですから、「誰でも自由に見られるの?」と気になる方もいるかもしれませんね。
結論から言うと、誰でも無条件に見られるわけではありませんが、法律で定められた一定の立場の人(会社の関係者)は、定款を見せてもらう権利(閲覧請求権)を持っています。
株主や債権者による閲覧請求権
会社法という法律では、主に以下のような人たちに、定款の閲覧を請求する権利を認めています。
- 株主の方
会社の株を持っている株主は、会社の営業時間内であれば、いつでも、特に理由を説明しなくても、会社の本店に保管されている定款を見せてもらったり、コピーを取らせてもらったりすることができます(会社法第31条第1項)。
これは、株主が会社の基本的なルールを確認し、株主としての権利(例えば、株主総会で意見を言う権利など)を正しく行使できるようにするためです。 - 会社の債権者(お金を貸している銀行や取引先など)の方
会社の役員の責任を追及するために必要があるときや、その他にも正当な理由がある場合には、裁判所の許可を得た上で、定款を見せてもらったり、コピーを取らせてもらったりすることができます(会社法第31条第2項)。
これは、債権者が会社の財産状況や運営体制を把握し、貸したお金をきちんと返してもらえるかなどを判断するために役立ちます。 - 会社設立中に関わる方
まだ会社が正式に出来上がる前(設立中)であっても、その会社の設立に関わっている発起人(最初に会社を作ろうとする人)は、定款を事務所に置いておく義務があります。そして、その会社にお金を出そうと考えている人(出資者)や、設立中の会社にお金を貸すことになる人(設立時債権者)は、その定款を見せてもらうことができます(会社法第31条第3項、第4項)。
これらの正当な権利を持つ人から「定款を見せてください」とお願いされた場合、会社は、よほどの正当な理由がない限り、それに応じなければなりません。
会社の登記事項証明書から一部情報を確認
定款そのものを直接見るわけではありませんが、会社の基本的な情報は、法務局という国の機関で「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」(昔は「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」と呼ばれていました)という書類を取得することで、誰でも確認することができます。
この登記事項証明書には、定款で定められた事項の一部が記載されているのです。
具体的には、
- 会社の正式名称(商号)
- 会社の本店の住所(本店所在地)
- 会社が何をする会社なのか(目的)
- 会社がどれだけの株式を発行できるかの限度(発行可能株式総数)
- 会社の資本金の額
- 会社の役員(取締役や監査役など)の名前
- 会社が重要なことを世間に知らせる方法(公告方法)
といった情報が、登記事項証明書を見れば分かります。これらは、定款の中でも特に重要な「絶対的記載事項」や、それに準じる大切な事項と深く関連しています。
定款の正しい保管方法と期間|紛失しないためのポイント
無事に作成され、法的な効力を持つようになった定款は、会社にとってパスポートや設計図のように、非常に大切な書類です。だから、きちんと、そして安全に保管する必要があります。実は、法律でも、会社に対して定款を備え置くことを義務付けているのです。
本店と支店での備え置き義務
会社法という法律の第31条第1項および第3項には、会社(そして、まだ設立手続き中の会社の発起人)は、定款をその会社の本店(メインオフィス)および支店(支社や営業所など)に備え置かなければならない、と定められています。
- 本店には
常に最新版の「現行定款」を備え置く必要があります。 - 支店にも
本店と同じように、現行定款の写し(コピー)か、もし電子定款であればその電磁的記録(データの形)を備え置く必要があります。
この「備え置き義務」は、先ほど説明したように、株主や債権者といった関係者から「定款を見せてください」とお願いされたときに、すぐに対応できるようにするためです。
では、定款はどれくらいの期間、保管しておかなければならないのでしょうか?
法律で「定款の保管期間は〇年間」というように、具体的な年数がハッキリと決められているわけではありません。しかし、定款は会社の最も基本的なルールであり、会社の歴史そのものでもあります。そのため、会社が存続している限りは、永久に大切に保管し続けるべきものと考えるのが一般的です。
電子定款の保存方法と注意点
最近主流になっている電子定款(PDFなどの電子データで作られた定款)で認証を受けた場合、そのデータの保存方法には、紙の定款とは少し違った注意が必要です。
- データのバックアップは必須!
公証役場から交付された認証済みの電子定款データ(多くの場合、CD-Rなどのメディアに入っています)は、必ず複数の場所にコピーしてバックアップを取っておきましょう。パソコンのハードディスクが壊れたり、CD-Rが読み込めなくなったりするリスクに備えるためです。 - 「本物であること」を保つ
電子定款のデータは、後から誰かが勝手に書き換えたりしていない、「本物のデータである」ということを証明できる状態で保管する必要があります。電子署名が付与された状態をそのまま維持し、不必要にファイルを開いたり編集したりしないように気をつけましょう。 - いつでも見られるように
将来、定款の内容を確認したり、印刷したりする必要が出てくるかもしれません。その時に困らないように、PDFファイルを開けるソフトや、場合によっては電子署名を確認するための環境(特定のソフトなど)を、いつでも使えるように維持しておく必要があります。 - クラウドストレージの活用も一手
安全性の高いクラウドストレージサービス(インターネット上のデータ保管サービス)に、データを暗号化(中身を他人に見られないようにする処理)して保管するのも、バックアップや共有の観点から有効な方法の一つです。ただし、そのサービス自体のセキュリティ対策がしっかりしているか、誰がそのデータにアクセスできるのか(アクセス権限の管理)を徹底することが非常に重要です。
紙の定款であれば、会社の金庫などに大切に保管することが一般的ですが、電子定款の場合は、データとしての適切な管理知識と、セキュリティへの高い意識が求められます。
定款変更の手続きと流れ|事業内容や役員変更時の対応
会社は生き物です。設立当初は考えてもいなかった新しい事業を始めたい、会社の成長に合わせて役員の構成を変えたい、本店をもっと便利な場所に移転したい…。会社が活動を続けていく中で、最初に作った定款の内容が、だんだんと今の会社の実情に合わなくなってくることがあります。
そんなときには、定款の内容を現状に合わせて変更する必要があります。
定款の変更は、会社の根本的なルールを変える、とても重要な行為です。そのため、法律で厳格な手続きが定められています。
株主総会(社員総会)での特別決議が必要
定款の内容を変更するためには、原則として、その会社の最高意思決定機関である「株主総会」(合同会社の場合は「社員総会」)で、特別な多数決による承認(これを「特別決議」といいます)を得る必要があります(会社法第466条、第309条第2項第11号)。
特別決議とは、通常の普通決議(例えば、役員の選任など)よりも、可決されるためのハードルが高く設定されている決議方法です。具体的には、
- まず、議決権(投票権)を持つ株主の過半数(半分を超える数)が株主総会に出席しなければなりません(この出席のハードルは、定款で「3分の1以上」まで少し緩めることも可能です)。
- そして、出席した株主が持つ議決権の、なんと3分の2以上の賛成があって、初めて可決されます。
合同会社の場合は、原則として「総社員の同意」が必要となりますが、これも定款で別のルール(例えば、社員の過半数の同意など)を定めることもできます。
なぜこんなに厳しい手続きが求められるのでしょうか?
それは、定款の変更が、株主や社員といった会社のオーナーたちの権利や利益に大きな影響を与える可能性があるからです。「会社の根本ルールを変えるなら、よほど多くの賛成がないとダメですよ」という、慎重な意思決定を促すための仕組みなのです。
定款変更に必要な書類と登記申請
株主総会(または社員総会)で、「よし、定款のこの部分をこう変えよう!」という特別決議が無事に可決されたら、それで終わりではありません。
その変更内容を証明するための正式な書類を作成し、さらに、変更した内容「登記事項」(法務局に登録されている会社の重要情報)に関わる場合には、法務局への変更登記申請という手続きが必要になります。
大まかな流れと、主な必要書類は以下の通りです。
- 株主総会(または社員総会)の招集・開催
定款のどの部分をどう変えるか、という議案(変えたい内容)を株主総会(社員総会)に提出し、話し合って決議します。 - 議事録の作成
総会で話し合われた内容や、決議の結果(賛成多数で可決されたことなど)を記録した「株主総会議事録(または社員総会議事録)」という書類を作成します。この議事録が、定款が正式に変更されたことを証明する、非常に重要な証拠書類となります。 - 変更登記申請(登記事項の変更がある場合のみ)
もし、変更した定款の内容が、法務局に登記されている情報(例えば、会社の商号、事業目的、本店所在地、発行できる株式の総数、役員の名前など)に関わる場合は、変更があった日から2週間以内に、会社の本店所在地を管轄する法務局に変更の登記を申請しなければなりません。
このときに必要となる主な書類は、- 変更登記申請書(法務局の様式があります)株主総会議事録(または社員総会議事録)株主リスト(株主総会で決議した場合に必要となる、株主の一覧表)その他、変更した内容によって追加で必要となる書類(例えば、新しく役員が就任した場合はその人の就任承諾書や印鑑証明書など)
変更登記を申請する際には、原則として30,000円の登録免許税という税金を国に納める必要があります(一部、税金がかからない変更もあります)。変更登記に関する費用やタイミングの詳細は、「変更登記の費用とタイミングを徹底解説! 必要な手続きを逃さず、過料を回避しよう」で詳しく解説しています。
定款変更の手続きは、このように法的な知識や正確な書類作成が求められるため、もし「自分でやるのはちょっと大変そうだな…」と感じる場合は、司法書士などの専門家に相談したり、手続きの代行を依頼したりすることも、賢い選択肢の一つです。
定款に関するQ&A|よくある疑問を専門家が解消
さて、ここまで定款の基本から作成、管理、変更に至るまで、かなり詳しく解説してきました。それでも、
「うーん、まだちょっとここがよく分からないな…」
「こういう場合はどう考えればいいんだろう?」
といった、具体的な疑問や細かな不安が残っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここからは、そんな皆さんの「?」をスッキリさせるために、定款に関して特によく寄せられる質問とその分かりやすい回答を、Q&A形式でまとめました。
Q1. 定款の読み方は「ていかん」で合っていますか?
A1. はい、その通りです!「定款」は「ていかん」と読みます。
法律用語やビジネス用語の中には、ちょっと変わった読み方をするものもありますが、「定款」については、自信を持って「ていかん」と読んでいただいて大丈夫です。
Q2. 定款の事業目的は複数記載しても良いのですか?
A2. はい、もちろんです!定款に書く会社の「事業目的」は、一つだけでなく、複数記載することができます。むしろ、将来的に「こんな事業もやってみたいな」と考えているものがあれば、設立の段階である程度幅広く記載しておくのが一般的です。
なぜなら、会社は原則として、定款に書かれている事業目的の範囲内でしか活動することができないからです。もし、定款に書いていない新しい事業を始めたくなった場合、後から定款を変更する手続き(株主総会の特別決議など)が必要になり、時間も手間もかかってしまいます。
ですから、設立時には、
- 今すぐ始める主力事業
- 近い将来、展開する可能性のある関連事業
- 将来的には挑戦してみたいと考えている新規事業
などをリストアップし、それらを事業目的に含めておくと良いでしょう。
ただし、注意点もあります。
- あまりにも多くの事業目的をただ羅列しすぎると…
その会社が「結局何を目指している会社なのか」「主力事業は何なのか」がぼやけてしまい、外部からの信用を得にくくなる可能性があります。 - 許認可が必要な事業を記載する場合…
例えば、建設業、飲食業、旅行業など、特定の事業を行うためには国や都道府県などから特別な許可や認可(許認可)が必要です。これらの事業を定款の目的に記載する場合は、実際にその許認可が取得できる見込みがあることが大前提となります。ただ書いただけでは事業はできません。
Q3. 定款に役員の任期や報酬を記載するメリットはありますか?
A3. 会社の役員(取締役や監査役など)の「任期(どれくらいの期間、役員を務めるか)」や「報酬(お給料やボーナス)」に関するルールを定款に書くことには、いくつかのメリットと、知っておくべき注意点があります。
役員の任期について、定款に書くメリットと注意点
メリット | 注意点・デメリット |
---|---|
【メリット1】非公開会社なら、任期を最長10年まで延ばせる! 特に社長が長く経営を続ける中小企業などでは、役員変更の手続きや登記の回数を減らせ、事務作業や費用の負担を軽くできます。 | 【注意点1】任期が長すぎると… 経営がマンネリ化したり、途中で「この役員には辞めてほしい」と思っても、正当な理由がないと辞めさせにくく、もし無理に辞めさせると会社が損害賠償を請求されるリスクも。 |
【メリット2】任期がハッキリする! 定款に書いておくことで、いつ役員の任期が満了し、再任(もう一度役員になってもらう)や退任の手続きが必要になるのかが、誰から見ても明確になります。 | 【注意点2】短すぎる任期も… あまりに短い任期(例えば1年など)を定款で定めると、毎年役員変更の手続きが必要になり、かえって手間が増えることも。 |
役員の報酬について、定款に書くメリットと注意点
メリット | 注意点・デメリット |
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【メリット1】報酬の決め方が明確になる! 「役員の報酬は株主総会で決める」とか「取締役会で決める」といったルールを定款に書いておくことで、報酬決定のプロセスが透明になり、役員同士の公平感も保ちやすくなります。 | 【注意点1】具体的な金額を書くのはNG! もし定款に「社長の月給は〇〇万円」と具体的な金額まで書いてしまうと、お給料を変えるたびに定款変更(株主総会の特別決議)が必要になり、とてつもなく面倒です。 |
【メリット2】株主への説明責任を果たせる! 特に株主が多い会社では、役員報酬がどのように決められているのかを定款で示しておくことで、株主からの信頼を得やすくなります。 | 【注意点2】一般的には「決定方法」を定める! 多くの会社では、具体的な金額ではなく、「役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価は、株主総会の決議によって定める」といった形で、「どうやって決めるか」というルールだけを定款に記載します。こうしておけば、具体的な金額の決定は、もっと柔軟な方法(例えば、株主総会の普通決議や、定款で委任されていれば取締役会の決議など)で行うことができます。 |
Q4. 定款を自分で作成する場合、特に注意すべき点は何ですか?
A4. 定款を専門家に頼らず、自分で作成することにチャレンジする場合、費用を抑えられるというメリットはありますが、法律的な知識が必要になるため、いくつかの点に特に注意して進める必要があります。
絶対に押さえておきたい注意点は、次の通りです。
- 【最重要】「絶対的記載事項」は絶対に漏らさない!そして間違えない!
これらが一つでも抜けていたり、内容が法律に合っていなかったりすると、定款そのものが無効になり、会社設立ができません。何度も何度も確認しましょう。 - 必ず最新の法律(会社法など)をチェックする!
法律は時々改正されます。古い情報やひな形を参考にすると、現在の法律に合わない定款を作ってしまう可能性があります。法務省のウェブサイトなどで最新情報を確認しましょう。 - ひな形は「あくまで参考」と心得る!
インターネットなどで手に入るひな形は便利ですが、そのまま丸写しするのではなく、あなたの会社の事業内容、規模、メンバー構成、将来の計画などに合わせて、きちんと内容をカスタマイズ(書き換えたり、追加したり)する必要があります。 - 「事業目的」の書き方は特に慎重に!
将来やりたい事業も含めて、明確かつ具体的に、そしてもちろん法律の範囲内で記載します。もし、特別な許可や認可(許認可)が必要な事業を書きたい場合は、本当にその許認可が取れるのか、事前に調べておくことが大切です。 - 「相対的記載事項」の選択は会社の未来を左右する!
例えば、「株式の譲渡制限(株を自由に売買できないようにするルール)」を設けるかどうか、役員の任期をどうするか、といった相対的記載事項は、会社の運営のあり方や将来の選択肢に大きな影響を与えます。それぞれのメリット・デメリットをよく理解した上で、あなたの会社に最適なものを選びましょう。 - 誤字・脱字・表記の揺れはNG!
定款は公的な性格を持つ重要な書類です。誤字脱字がないか、言葉の使い方が統一されているか(例えば、「当会社」と「当社」が混在していないかなど)を、提出前に徹底的にチェックしましょう。 - (株式会社の場合)公証役場での「認証」手続きの流れを事前に把握しておく!
いつ、どこで、どんな書類が必要で、費用はいくらかかるのかなど、スムーズに認証手続きを進めるための段取りを、あらかじめ公証役場に問い合わせるなどして確認しておきましょう。 - 少しでも「あれ?」と思ったら、迷わず専門家に相談!
自分で作っていて、「これで本当に合っているのかな…」「ここの書き方がよく分からない…」といった不安な点が出てきたら、無理せず専門家(行政書士、司法書士、税理士など)に相談することをおすすめします。無料相談を実施している事務所も多いです。間違ったまま進めてしまって、後で大きな手戻りが発生すると、時間も費用も余計にかかってしまう可能性がありますからね。
Q5. 定款の作成や変更を専門家(行政書士・司法書士)に依頼するメリットと費用相場は?
A5. 定款の作成(特に会社設立時)や、設立後の定款変更の手続きを、専門家(主に行政書士や司法書士)にお願いすることには、時間と手間を大幅に節約できるだけでなく、たくさんのメリットがあります。
専門家に依頼する主なメリット
- 【安心確実!】法律的にパーフェクトな定款を作ってもらえる!
専門家は、会社法などの最新の法律に精通しています。だから、「絶対的記載事項」の記載漏れや、法律に違反する内容を書いてしまうといった致命的なミスを確実に防ぐことができます。 - 【オーダーメイド!】あなたの会社にピッタリの定款を提案してくれる!
あなたの会社の事業内容、将来の夢や計画などを丁寧にヒアリングした上で、「こういう事業目的にしましょう」「こういう機関設計が合っていますよ」「この相対的記載事項は入れた方がいいですね」といった、プロならではの最適なアドバイスをしてくれます。 - 【時間と手間を大幅カット!】面倒な手続きを全部お任せできる!
特に株式会社の設立時の「公証人認証」や、定款変更後の「法務局への登記申請」といった手続きは、書類も多くて結構大変です。これらを全て代行してくれるので、あなたは本業の準備などに集中できます。特に、印紙代4万円が節約できる「電子定款」の作成や認証は、専門的な知識と環境が必要なので、専門家に任せるメリットは非常に大きいです。 - 【プラスアルファのアドバイスも!】設立後の運営も見据えたサポートが期待できる!
会社設立全般に詳しい専門家であれば、定款作成だけでなく、その後の許認可申請や会計・税務に関する相談にも乗ってくれることがあります。頼れるパートナーになってくれるかもしれません。 - 【何より精神的にラク!】「これで大丈夫かな…」という不安から解放される!
自分で全てをやろうとすると、「これで本当に合っているんだろうか…」という不安が常につきまといますが、専門家に任せれば、その道のプロが責任を持って進めてくれるので、安心して設立準備を進められます。
専門家への依頼費用の目安
専門家にお願いする場合の費用は、どの業務をどこまでお願いするか、設立する法人の種類(株式会社か合同会社かなど)、そしてその専門家の経験や料金設定によって変わってきますが、一般的な目安としては、以下の通りです。
依頼内容 | 費用の目安(税別) | 備考 |
---|---|---|
株式会社の定款作成・認証代行 | 行政書士に依頼:5万円~15万円程度 | 電子定款で対応してくれる場合、別途かかるはずの印紙代4万円は不要になりますが、専門家への報酬はこれくらいかかります。公証人に支払う認証手数料5万円は別途必要です。 |
司法書士に依頼:設立登記まで全て含めて20万円~30万円程度 | この中には、国に納める登録免許税(最低15万円)、公証人手数料(5万円)、そして司法書士への報酬が含まれていることが多いです。どこまでが含まれているか、見積もりでしっかり確認しましょう。 | |
合同会社の定款作成 | 3万円~10万円程度 | 合同会社は公証人の認証が不要なので、株式会社よりは安くなる傾向があります。 |
定款変更の手続き代行 (株主総会議事録作成、法務局への登記申請など) | 5万円~15万円程度 | 変更する内容(例えば、役員変更だけか、目的変更も含むかなど)によって費用が変わります。法務局に納める登録免許税(通常3万円)は別途必要です。 |
これらの費用は、あくまで一般的な目安です。具体的な金額は、必ず個別の事務所に見積もりを依頼して確認するようにしましょう。
まとめ|定款を理解して、スムーズな会社設立・運営を実現しよう
この記事では、「定款(ていかん)とは何か?」という基本的な疑問からスタートし、その重要性、具体的な記載内容、作成方法、会社の種類による違い、さらには作った後の管理や変更の手続きに至るまで、定款に関する情報を幅広く、そしてできる限り分かりやすく解説してきました。
定款は、まさに「会社の憲法」であり、その設立と運営の根幹をなすものです。その内容を正しく理解し、あなたの会社の実情に合わせて適切に作成・管理することは、法令遵守はもちろんのこと、会社の円滑な運営、関係者の権利保護、そして社会的な信用獲得のために不可欠と言えるでしょう。
最後に、本記事のポイントを振り返ってみましょう。
- そもそも「定款」とは何なのか、その本当の意味と役割を理解できましたか?
定款は「会社のルールブック」であり、会社の目的、組織、運営に関する基本原則を定めた、法的な拘束力を持つ重要な文書です。 - 定款にはどんな大切なことが書かれているのか(記載事項のすべて)を把握できましたか?
絶対に書かなければ定款が無効になる「絶対的記載事項」、書いて初めて法的な効力が生まれる「相対的記載事項」、そして会社の任意で自由にルールを定められる「任意的記載事項」の3種類がありましたね。 - 定款をいつ、誰が、どうやって作るのか(作成から認証までの流れ)が明確になりましたか?
主に会社設立時に、その会社を作ろうとする発起人などが作成します。ひな形を参考に自分で作る方法もあれば、専門家にお願いする方法もありました。株式会社の場合は、公証役場での「認証」というお墨付きが必要です。 - 株式会社、合同会社、NPO法人など、会社の種類による定款の違いが分かりましたか?
法人の種類によって、定款に書くべきことや重視するポイント、認証の要否などが異なることを学びました。 - 作った後の定款の保管方法や、内容を変更する時の手続きについて理解できましたか?
定款は本店などにきちんと保管し、株主などから見せてほしいと頼まれたら応じる義務があります。内容を変更するには、原則として株主総会で特別な多数決(特別決議)が必要です。 - 定款に関するよくある疑問とそのスッキリ解決策を見つけられましたか?
読み方から事業目的の書き方、専門家への依頼費用まで、具体的なQ&Aでスッキリ解消できたでしょうか。
「定款」と聞くと、最初はなんだか難しくてとっつきにくいイメージがあったかもしれません。でも、この記事を通してその全体像がハッキリと見え、少しでも「なるほど、そういうことだったのか!」と身近に感じていただけたなら、とても嬉しく思います。
定款に関する正しい知識は、これから会社を設立しようと夢を膨らませているあなたにとっても、既に会社の経営に携わっているあなたにとっても、必ず力強い武器となるはずです。
この情報が、あなたのスムーズな会社設立、そしてその後の健全で発展的な会社運営の、確かな一助となることを心より願っています。頑張ってください!
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