「社会のために、この熱い想いを形にしたい!」
そう願ってNPO法人の設立を考え始めたものの、いざ調べてみると
「手続きが複雑で難しそう……」
「設立にかかる費用や期間は?」
「本当に自分たちだけでできるんだろうか……」
そんな不安や疑問が、まるで高い壁のように立ちはだかっていませんか?
その気持ち、痛いほどよく分かります。NPO法人の設立は、確かに株式会社などとは異なる特有のステップがあり、誰もが一度は「難しい」と感じるものです。
「でも、具体的に何がどう難しいの?」
「どうすればその壁を乗り越えられるの?」
「設立後の運営まで考えると、やっぱり不安!」
そんな皆さんの心の声に、この記事は真正面からお答えします!
この記事を読めば、以下のことが明確になります。
- NPO法人設立が「難しい」と言われる具体的な7つの理由とその背景
- 「難しい」を乗り越えるための、準備から登記までの完全ロードマップと各ステップの攻略法
- 設立にかかるリアルな費用と期間の目安
- 自分で設立する場合と専門家に依頼する場合のメリット・デメリット徹底比較
- 設立後の運営に関する不安を解消するためのヒントと、NPO法人の可能性
この記事を読み終える頃には、NPO法人設立への漠然とした不安は具体的な行動計画へと変わり、「難しい」という印象は「自分にもできるかもしれない!」という確かな自信へと変わっているはずです。さあ、あなたの社会貢献への第一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう。
当サイトでは「バーチャルオフィスのレビュー記事」をご用意しています。気になるサービス名をクリック・タップすると、解説記事が表示されます。
バーチャルオフィスの基礎知識や、おすすめのサービス・選び方を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください!
なぜNPO法人の設立は「難しい」と言われるのか?多くの人がつまずく7つのポイント
NPO法人の設立が「難しい」と感じられる背景には、いくつかの特有の要因が存在します。これらの「難しさ」を事前に把握しておくことが、スムーズな設立への第一歩となるでしょう。
ここでは、具体的にどのような点がハードルとなり得るのか、多くの方が直面しやすい7つのポイントを深掘りしていきます。
まずは、設立の難易度に関わる主な要素を整理してお伝えします。
- 手続きの多くて複雑
単に書類を提出するだけでなく、所轄庁との折衝が発生し、これが最初の関門となることがあります。 - 書類作成に専門知識が求められる
特に法人の根幹となる定款や事業計画書は、法的な要件を満たしつつ、団体の理念を正確に反映させる必要があり、作成には細心の注意が必要です。 - 人員集めのハードル
法律で定められた人数(役員として理事3名以上・監事1名以上、社員10名以上)の賛同者を集める必要があります。 - 時間と労力が想像以上にかかる
書類準備から認証、登記完了まで、一般的に数ヶ月単位の期間と多大な手間を要します。 - NPO法人設立に費用がかかる
株式会社設立時の登録免許税は非課税ですが、その他の実費や、専門家に依頼する場合はその報酬が発生します。 - 設立後の運営への漠然とした不安が消えない
設立手続きだけでなく、その後の会計処理や毎年の報告義務など、継続的な運営面での負担も考慮に入れる必要があります。 - 情報収集が難しい
どの情報が正確で、誰に相談すれば的確なアドバイスを得られるのか、適切な情報源を見つけるのが難しいと感じる方も少なくありません。
それでは、これらの各ポイントについて、より詳しく見ていきましょう。
手続きの多さと複雑さが最初の関門
NPO法人の設立手続きが「難しい」と感じられる大きな理由の一つは、その手続きのステップの多さと、それぞれのステップにおける複雑さにあります。株式会社の設立であれば、主に法務局とのやり取りで完結することが多いですが、NPO法人の場合は、まず「所轄庁(しょかつちょう)」による「認証(にんしょう)」を得る必要があります。
この「所轄庁」とは、原則としてそのNPO法人の主たる事務所が所在する都道府県の知事、あるいは政令指定都市の長を指します。(出典:特定非営利活動促進法 第九条)

所轄庁は、提出された書類が法令に適合しているか、事業内容がNPO法人の活動として適切かなどを審査します。この審査プロセスには一定の期間を要し、書類に不備があれば修正を求められることも少なくありません。この所轄庁との事前相談や質疑応答、書類のやり取りが、設立経験のない方にとっては最初の大きな関門となり得るのです。
具体的には、申請書類の準備、所轄庁への提出、縦覧(じゅうらん:申請内容が一般に公開される期間)、審査、認証、そして法務局での設立登記という流れを経るため、一つ一つの手続きを正確に理解し、適切に対応していく必要があります。
この一連の流れは、例えば「起業は何からすれば良い?開業・創業までのステップやビジネスアイデア、必須スキルが丸わかり」で解説している一般的な起業プロセスと比較しても、NPO法人特有のステップが含まれている点が特徴です。

専門知識が求められる書類作成|定款・事業計画書は最重要
NPO法人を設立するためには、数多くの書類を作成し、提出しなければなりません。中でも特に重要かつ作成に専門知識が求められるのが、「定款(ていかん)」と「事業計画書」です。
「定款」とは、そのNPO法人の目的、組織、運営に関する基本的なルールを定めた、いわば法人の憲法のようなものです。詳しくは、以下の記事で解説しています。

特定非営利活動促進法(NPO法)で定められた記載事項を網羅し、法人の実態に即した内容にする必要があります。例えば、役員の定数や任期、会議の運営方法、解散に関する事項など、細かく規定しなければならない項目が多数存在します。
これらの規定の一つ一つが、後の法人運営に直接影響するため、慎重な検討と正確な記述が求められます。
一方、「事業計画書」は、今後2事業年度(法人が活動を行う期間の単位で、通常は1年間)にわたって、どのような非営利活動を行い、どのような成果を目指すのかを具体的に示す書類です。活動の目的、内容、実施方法、期待される効果などを、所轄庁や市民に理解できるように分かりやすく記述する必要があります。
また、これとセットで提出する「活動予算書(または収支予算書)」では、事業計画を実現するための具体的な収入と支出の見込みを示す必要があり、計画の実現可能性を裏付ける重要な要素となります。この事業計画書の作成については、「【テンプレあり】事業の収支計画書の作り方・書き方を解説!目的やメリット、押さえるべきポイントも合わせて紹介します」の記事も参考になるでしょう。

これらの書類は、単に形式を整えるだけでなく、法人の理念や活動内容を的確に反映し、かつ法的な要件を満たすものでなければならないため、専門的な知識や経験がないと作成が難航するケースが多いのです。
人員集めのハードル|役員・社員10名以上の要件
NPO法人を設立するためには、人的な要件もクリアしなければなりません。具体的には、役員として理事が3人以上、監事が1人以上必要です。さらに、NPO法人の構成員である「社員(しゃいん)」が10人以上必要とされています。(出典:特定非営利活動促進法 第二条及び第十一条)


ここでいう「社員」とは、一般企業で働く従業員のことではなく、NPO法人の最高意思決定機関である「社員総会」で議決権を持つ正会員のような立場の人を指します。つまり、設立時には少なくとも、役員(理事・監事)と社員を合わせて10名以上の賛同者を集めなければならないのです。
社会貢献への想いを共有し、共に活動してくれる仲間を見つけることは、素晴らしいことであると同時に、一定の困難を伴う場合もあります。特に、活動の初期段階では、理念に共感してくれる人を集め、役員や社員としての責任を担ってもらう承諾を得るまでに時間と労力がかかることがあります。また、役員には欠格事由(NPO法人の役員になれない条件)も定められているため、人選にも注意が必要です。(参照:特定非営利活動促進法 第二十条)

時間と労力が想像以上にかかる|本業との両立は大変?
NPO法人の設立は、思い立ってすぐに完了するものではありません。前述の通り、書類準備、人員集め、所轄庁への申請、認証、登記といった一連のプロセスには、一般的に数ヶ月単位の時間が必要となります。
所轄庁への認証申請から認証決定までの標準処理期間は、多くの自治体で2ヶ月から4ヶ月程度とされていますが(申請書類に不備がない場合)、それ以前の準備期間(事業計画の策定、定款作成、役員・社員の確保など)や、認証後の登記手続きにかかる時間も考慮に入れると、全体では半年以上を要することも珍しくありません。
特に、本業の仕事や他の活動をしながら設立準備を進める場合、書類作成や関係者との調整に割ける時間が限られてしまい、思うように進まないことがあります。細かな事務作業や、法律・制度の調査など、地道な作業も多いため、想像以上に時間と精神的な労力がかかることを覚悟しておく必要があるでしょう。
もし副業としてNPO法人の設立を考えている方は、「会社員の副業で「開業届」をわざわざ提出する必要はある?出さないとどうなる?メリット・デメリットを徹底解説!」の記事で触れているような、本業との両立に関する一般的な課題も参考になるかもしれません。

NPO法人設立にかかる費用|「無料」ではない実態
NPO法人の設立に関して、「株式会社の設立と比べて費用がかからない」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。確かに、株式会社の設立時に必要な登録免許税(とうろくめんきょぜい:登記の際に国に納める税金)は、NPO法人の場合は非課税です。また、定款認証の際に公証人に支払う手数料も、NPO法人の場合は原則として不要です(ただし、一部例外的に必要なケースもあります)。
しかし、だからといってNPO法人の設立が完全に「無料」でできるわけではありません。例えば、以下のような費用が発生する可能性があります。
- 住民票や印鑑証明書などの取得費用: 役員に就任する人のものなどが必要です。
- 事務所の賃貸契約にかかる費用: 主たる事務所を新たに借りる場合。
- 設立総会の会場費など: 参加人数に応じて発生する場合があります。
- 専門家(行政書士など)への依頼費用: 設立手続きの代行を依頼する場合。
特に、設立手続きの複雑さや時間的制約から専門家に依頼する場合は、数十万円単位の報酬が発生することが一般的です。これらの実費や専門家への報酬を考慮すると、ある程度の資金準備は必要になると言えるでしょう。
設立にかかる費用を抑える工夫については、「初期費用・ランニングコストを削減する起業・開業術18選!費用を抑えるためのおすすめサービス・ツールを深掘りします」の記事でも一般的な起業の観点から解説していますので、ヒントになる部分があるかもしれません。

設立後の運営への漠然とした不安|会計処理や報告義務
NPO法人の設立の「難しさ」は、設立手続きそのものに限りません。設立後の法人運営に対する漠然とした不安も、設立をためらう要因の一つとなり得ます。
NPO法人は、非営利活動を行う団体ですが、法人である以上、適正な会計処理を行い、毎事業年度終了後には事業報告書や計算書類(活動計算書、貸借対照表など)を作成し、所轄庁に提出する義務があります。(出典:特定非営利活動促進法 第二十八条、第二十九条) これらの書類は市民にも公開され、透明性の高い運営が求められます。
NPO法人特有の会計基準(NPO法人会計基準)を理解し、日々の取引を正確に記録・管理していくことは、会計の専門知識がない方にとっては大きな負担となる可能性があります。また、役員の変更や定款の変更などがあった場合にも、所轄庁への届出や登記が必要となり、これらの事務手続きも継続的に発生します。会計処理については、例えば「個人事業主向け会計ソフトおすすめ5選|機能・料金・サポートを徹底比較!【フリーランス・個人事業主は必見】」のような会計ソフトの活用も視野に入れると良いでしょう(NPO法人向けの会計ソフトも存在します)。
「設立はしたものの、その後の運営をちゃんとやっていけるだろうか」という不安は、特に少人数でNPO法人を立ち上げようとする場合に抱きやすいものです。
情報収集の難しさ|誰に相談すればいいかわからない
NPO法人設立に関する情報は、インターネット上にも多数存在しますが、どの情報が正確で、自分のケースに合っているのかを見極めるのが難しいと感じる方も少なくありません。また、法律や制度は改正されることもあるため、常に最新の情報を参照する必要があります。
さらに、設立準備を進める中で具体的な疑問や課題に直面した際に、「誰に相談すれば的確なアドバイスをもらえるのかわからない」という状況に陥ることもあります。所轄庁の担当窓口、NPO支援センター、行政書士などの専門家が相談先として挙げられますが、それぞれの役割や得意分野を理解し、適切な相手にコンタクトを取ることも、一つのハードルと言えるかもしれません。
信頼できる相談先を見つける手段として、「よろず支援拠点とは?創業から経営改善までサポートする無料相談窓口の基礎知識」で紹介されているような公的支援機関の活用も検討してみると良いでしょう。

特に、地域によってはNPO支援に特化した専門家が少ない場合もあり、信頼できる相談相手を見つけるまでに苦労することもあるでしょう。
これらの「難しさ」を理解した上で、次に具体的な設立のステップと、それぞれのハードルを乗り越えるためのポイントを見ていきましょう。
「難しい」を乗り越える!NPO法人設立の完全ロードマップ|準備から登記までの全手順
NPO法人設立の「難しさ」を具体的に把握したところで、次はその壁を乗り越えるための具体的な道のり、すなわち設立の完全ロードマップを解説します。準備段階から法務局への登記完了まで、どのようなステップがあり、それぞれの段階で何を押さえておくべきか、詳細に見ていきましょう。このロードマップに沿って進めれば、複雑に思える手続きも着実にクリアできるはずです。
大まかな流れとしては、以下のステップで進んでいきます。
- 設立準備: NPO法人の目的や事業内容を固め、共に活動する仲間を集めます。この段階が、後の全てを左右すると言っても過言ではありません。
- 書類作成と収集: 定款や事業計画書など、認証申請に必要な多数の書類を、法的な要件を満たしつつ、団体の実情に合わせて作成・収集します。
- 所轄庁への認証申請: 作成した書類一式を所轄庁に提出し、内容の審査を受けます。ここでのやり取りが、NPO法人設立の山場の一つです。
- 設立登記手続き: 所轄庁からの認証後、法務局で設立の登記を行い、晴れて法人格を取得します。
これらの各ステップを、一つ一つ丁寧に見ていきましょう。
ステップ1:設立準備|NPO法人の骨子を固める最重要フェーズ
NPO法人設立の最初のステップであり、最も重要とも言えるのが、この「設立準備」のフェーズです。ここで法人の基本的な方向性や体制をしっかりと固めておくことが、後の手続きをスムーズに進め、かつ設立後の活動を持続可能なものにするための鍵となります。
このフェーズで取り組むべき主な内容は、以下の4点に集約されます。
- 目的と事業内容の明確化: 法人として何を成し遂げたいのか、そのために具体的に何を行うのかを徹底的に議論し、明確にします。
- 発起人の選定と意思統一: 設立の中心となるメンバーを選び、設立の趣旨や運営方針について共通認識を形成します。
- NPO法人の名称決定: 法人の顔となる名称を、ルールに則って決定します。
- 事務所の確保: 法人の活動拠点となる事務所を確保します。
それでは、それぞれの詳細を見ていきましょう。
1-1. 目的と事業内容の明確化|社会に何を提供したいのか?
まず、「なぜNPO法人を設立するのか」「どのような社会課題を解決したいのか」「具体的にどのような活動を行うのか」といった、法人の根幹となる目的と事業内容を明確にしなければなりません。これは、後の定款作成や事業計画書作成の基礎となるだけでなく、共に活動する仲間を集める上での求心力にもなります。
NPO法人が行うことができる「特定非営利活動」は、特定非営利活動促進法(NPO法)の別表に掲げられた20の分野に限定されています(例えば、保健・医療・福祉の増進を図る活動、社会教育の推進を図る活動、まちづくりの推進を図る活動など)。(出典:特定非営利活動促進法 第二条別表) 自分たちの活動がこれらのいずれに該当するのかを確認し、具体的な事業内容を練り上げていく必要があります。
この段階で、ミッション(使命)、ビジョン(目指す姿)、バリュー(価値観)といったものを言語化し、関係者間で共有しておくことが、団体の方向性をぶらさずに進めるために非常に有効です。
事業アイデアの発想法については、「起業したいけどアイデアがない…!ゼロからの起業アイデア発想法5選と具体例15選を一挙解説」も、発想のヒントとして役立つかもしれません。

1-2. 発起人の選定と意思統一|共に歩む仲間探し
NPO法人の設立は一人ではできません。前述の通り、役員として理事が3人以上、監事が1人以上、そして社員(議決権を持つ正会員など)が10人以上必要です。設立準備段階では、これらの役割を担ってくれる「発起人(ほっきにん)」、つまり設立の中心となるメンバーを集める必要があります。
発起人は、法人の目的や事業内容に深く共感し、設立手続きからその後の運営まで積極的に関わってくれる人であることが望ましいでしょう。発起人間で、設立の目的、事業計画、運営方針などについて十分に話し合い、意思統一を図っておくことが非常に重要です。意見の食い違いや認識のズレがあると、後の書類作成や意思決定で混乱が生じる可能性があります。
役員候補者については、NPO法で定められている欠格事由(例えば、成年被後見人や禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わった日から2年を経過しない者など)に該当しないかを確認することも忘れてはいけません。(参照:特定非営利活動促進法 第二十条、前掲)
1-3. NPO法人の名称決定|ルールと注意点
NPO法人の名称(法人名)は、その団体を象徴する大切なものです。自由に決められる部分も多いですが、いくつかのルールと注意点があります。
- 「特定非営利活動法人」という文字を名称中に使用する義務: これは法律で定められています。(出典:特定非営利活動促進法 第四条) 例えば、「特定非営利活動法人○○会」「NPO法人△△サポートセンター」といった形になります。
- 他の法律で制限されている名称の使用禁止: 例えば、病院や学校と誤認されるような名称は使用できません。
- 既存のNPO法人と同一または類似の名称: 同一の名称はもちろん避けるべきですし、あまりに似ていると混同を招く可能性があります。事前に、内閣府のNPO法人ポータルサイトや、所轄庁のウェブサイトで既存のNPO法人名を調べておくと良いでしょう。(参照:内閣府NPOホームページ 「NPO法人ポータルサイト」などで検索)
- 公序良俗に反する名称や、誤解を招く名称は避ける: 社会通念上、不適切と判断される可能性のある名称は認証されないことがあります。
名称の重複については、「会社名、他社と被ったらどうなる?同じ商号はアウト?起業・副業前に知っておくべきルールと調査方法を解説」の記事も、一般的な商号に関する注意点として参考になります。
名称は、団体の活動内容や理念を反映し、かつ覚えやすく親しみやすいものであることが望ましいでしょう。縁起を担ぎたい方は、「【開運・事業繁栄】社名・屋号には縁起の良い漢字を使おう!目的別・業種別のオススメ漢字やその意味・由来を解説」のような記事も、名付けの際のインスピレーションになるかもしれません。


1-4. 事務所の確保|活動拠点としての要件
NPO法人は、主たる事務所の所在地を定款に記載し、そこで登記をする必要があります。 この事務所は、法人の活動拠点となり、連絡先としても機能します。
事務所の要件としては、必ずしも専用のオフィススペースを借りる必要はなく、発起人の自宅の一部を使用することも可能です。ただし、その場合でも、法人としての独立性が保たれ、郵便物などが確実に受け取れる状態であることが求められます。賃貸物件の場合は、契約上、事務所としての使用が認められているかを確認する必要があります。
自宅開業については、「自宅開業・在宅起業の方法とは?メリットや注意点、おすすめ業種が丸わかり|在宅起業で自由な働き方を実現」の記事が参考になるでしょう。

近年では、物理的な事務所を持たずに活動するケースも増えていますが、NPO法人の設立登記には必ず「主たる事務所の所在地」が必要です。
そんな時に役立つのがバーチャルオフィスです。主要都市の一等地住所をビジネス利用することができるサービスで、自宅バレリスクの低減や、対外的な安心感醸成に一役買ってくれる優れもの。
筆者も実際に利用しているのですが、開業届・法人登記への利用やネットショップの特定商取引法に基づく表記に使えるのはもちろんのこと、請求書・領収書に自宅住所を書きたくない場合にも使用可能なので、自宅開業におけるプライバシー保護として重宝します。
ちなみに筆者はGMOオフィスサポートを使っています。
サービスの詳しい内容は以下の記事をご参照ください。限定のクーポンコードを使えば、基本料金が10%オフになるのでぜひご利用くださいね。

クーポンコードを使用したい場合、
↓必ず以下のボタンからお申し込みください↓
いま使える!GMOオフィスサポートの
クーポンコードは「 REF-5iyuzy 」です。
お間違えのないように!
しかし、NPO法人の場合、その活動の実態や情報公開の透明性が重視されるため、バーチャルオフィスの利用が認められるかどうかは所轄庁の判断や、提供されるサービス内容(会議室利用の可否など)によって異なります。
「【2025年完全版】バーチャルオフィスとは?利用すべき?よくある質問にわかりやすく回答します」の記事でバーチャルオフィスに関する基本的な情報を得ておくと良いでしょう。もしバーチャルオフィスを利用する場合、例えば「GMOオフィスサポート」(レビュー記事)や「DMMバーチャルオフィス」(レビュー記事)のようなサービスがありますが、NPO法人での利用可否や条件は必ず各サービス提供会社および所轄庁にご確認ください。
【GMOオフィスサポート】
都心一等地の住所が利用可能で、郵便物の転送サービスも充実しています。NPO法人での利用については、事前に確認が必要です。
【DMMバーチャルオフィス】
業界最安値水準の価格設定で、多様なプランから選択可能です。NPO法人での利用については、事前に確認が必要です。
この設立準備フェーズでしっかりと土台を築くことが、その後のステップを円滑に進めるための何よりの秘訣です。
ステップ2:最難関!?設立に必要な書類作成と収集|不備なく進めるコツ
設立準備でNPO法人の骨子が固まったら、次はいよいよ所轄庁への認証申請に必要な書類の作成と収集です。このステップは、NPO法人設立において最も時間と労力を要する部分であり、「最難関」と感じる方も少なくありません。書類の種類が多く、一つ一つに記載要件があるため、丁寧かつ正確な作業が求められます。
主に作成・収集が必要となる書類は以下の通りです。これらの書類は、所轄庁によって若干書式や名称が異なる場合があるため、必ず申請先の所轄庁が提供する手引きや様式を確認してください。
- 定款: 法人の根本規則。
- 役員名簿及び役員のうち報酬を受ける者の名簿: 役員の氏名、住所、報酬の有無などを記載。
- 各役員の就任承諾及び誓約書の謄本(コピー): 役員就任の意思と欠格事由に該当しないことの誓約。
- 各役員の住民票の写し等: 役員の身元を証明する書類。
- 社員のうち10人以上の者の名簿: 社員の氏名、住所を記載。
- 確認書: 特定非営利活動促進法第2条第2項第2号(宗教活動や政治活動を主目的としない等)及び第12条第1項第3号(暴力団でない等)に該当することを示す書面。
- 設立趣旨書: 設立の目的や背景を説明する書類。
- 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本: 設立総会の議事録。
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書: 今後の活動内容を具体的に記載。
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書(または収支計算書): 事業計画に対応する収入と支出の見込み。
参照:多くの都道府県・指定都市のNPO法人担当部署のウェブサイトに掲載されている「設立・運営の手引」など。例えば、東京都生活文化スポーツ局「NPO法人ポータルサイト」などで検索
これらの書類を不備なく揃えるためのコツと、特に重要な書類のポイントを解説します。
2-1. 定款作成のポイント|NPO法人の憲法をどう作る?
定款(ていかん)は、NPO法人の目的、組織、運営に関する根本規則を定めたもので、まさに「法人の憲法」と言える最重要書類です。特定非営利活動促進法(NPO法)で定められた絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)と、任意で記載できる任意的記載事項があります。
絶対的記載事項の例としては、以下のようなものがあります。
- 目的
- 名称
- その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類
- 主たる事務所及びその他の事務所の所在地
- 社員の資格の得喪に関する事項
- 役員に関する事項(定数、任期、選任方法など)
- 会議に関する事項(社員総会、理事会など)
- 資産に関する事項
- 会計に関する事項
- 事業年度
- 解散に関する事項
- 残余財産の帰属に関する事項
- 定款の変更に関する事項
- 公告の方法
(出典:特定非営利活動促進法 第十一条第一項 e-Gov法令検索 特定非営利活動促進法)
定款を作成する際は、所轄庁が提供しているひな形や手引きを参考にすると良いでしょう。ただし、ひな形をそのまま使うのではなく、自分たちの法人の実態や理念に合わせて内容をカスタマイズすることが重要です。例えば、役員の選任方法や社員総会の議決要件など、運営の根幹に関わる部分は慎重に検討する必要があります。
2-2. 事業計画書・活動予算書の書き方|説得力のある内容とは
事業計画書は、設立認証申請時から2事業年度分の活動内容を具体的に記述するものです。どのような社会課題に対して、どのようなアプローチで取り組み、どのような成果を目指すのかを、誰にでも分かりやすく、かつ具体的に示す必要があります。
事業計画書に盛り込むべき主な項目は以下の通りです。
- 事業の目的: 何を達成しようとしているのか。
- 事業の内容: 具体的にどのような活動を行うのか(例:セミナー開催、相談事業、情報発信など)。
- 実施方法: いつ、どこで、誰が、どのように行うのか。
- 対象者・受益者: 誰のために活動するのか。
- 期待される効果: 活動によってどのような良い変化が生まれるのか。
- 事業の評価方法: 成果をどのように測定・評価するのか。
一方、活動予算書(または収支予算書)は、事業計画書に記載された活動を実現するための具体的な収入と支出の見込みを示すものです。収入源としては、会費、寄付金、事業収入(NPO法人が行う収益事業からの収入など)、助成金・補助金などが考えられます。支出としては、人件費、事務所費、事業費(活動に必要な経費)などがあります。
事業計画書と活動予算書は、互いに整合性が取れていることが重要です。夢物語ではなく、実現可能な計画であり、そのための資金計画がしっかりと立てられていることを示す必要があります。
2-3. 役員名簿・社員名簿の準備|10人以上の要件クリアのために
NPO法人を設立するためには、役員(理事3名以上、監事1名以上)と社員(10名以上)が必要です。これらの人々の情報をまとめた「役員名簿」と「社員名簿」を作成します。
役員名簿には、役員の氏名、住所または居所、報酬の有無などを記載します。報酬を受ける役員がいる場合は、その旨も明記する必要があります。
社員名簿には、10名以上の社員の氏名と住所または居所を記載します。この社員は、設立総会で議決権を行使し、法人の重要事項を決定する役割を担います。
これらの名簿に記載する人々には、事前にNPO法人の設立趣旨や活動内容を説明し、役員または社員として参画することについての承諾を得ておく必要があります。特に役員については、後述する「就任承諾及び誓約書」や住民票の提出も必要となるため、早めに協力を依頼しましょう。
人員集めが「難しい」と感じる場合は、まず身近な友人・知人、同じ問題意識を持つ人々、既存の関連団体などに声をかけてみるのが一般的です。設立準備の段階から積極的に情報発信を行い、活動の意義を伝える努力も重要になります。
2-4. 設立趣旨書で想いを伝える|共感を呼ぶ文章作成術
設立趣旨書(せつりつしゅししょ)は、なぜこのNPO法人を設立しようと思ったのか、どのような社会課題を解決したいのか、そのためにどのような活動を行うのか、といった設立の背景や目的、理念を文章で表明する書類です。
この書類は、所轄庁の審査官だけでなく、広く市民にも公開されるため(認証申請後の縦覧期間など)、法人の「顔」とも言える重要なものです。単に事実を列挙するだけでなく、設立に至った発起人たちの熱い想いや、社会に対する真摯な問題意識が伝わるような、共感を呼ぶ文章を心がけることが大切です。
構成としては、以下のような流れで記述すると分かりやすいでしょう。
- 解決したい社会課題や現状認識(どのような問題があるのか)
- その課題に対する問題提起(なぜそれが問題なのか)
- NPO法人を設立して取り組む目的と具体的な活動内容(どう解決するのか)
- 活動によって期待される社会的効果や将来展望(どのような良い未来を目指すのか)
- 設立に至るまでの経緯や発起人の想い(なぜ私たちがやるのか)
専門用語を避け、誰にでも理解できる平易な言葉で、情熱と誠意を持って記述しましょう。
2-5. 設立総会議事録の作成|法的に有効な記録を残す
NPO法人を設立するためには、設立総会(せつりつそうかい)を開催し、そこで定款の承認、事業計画及び活動予算の決定、役員の選任など、設立に関する重要事項を議決する必要があります。
設立総会議事録は、この設立総会で何が話し合われ、何が決定されたのかを記録する公式な書類です。法的に有効な議事録を作成するためには、以下の事項を正確に記載する必要があります。
- 開催日時及び場所
- 総社員の数及び出席社員数(定足数を満たしているか)
- 議長の氏名
- 議事の経過の要領及びその結果(各議案に対する賛成・反対の数など)
- 議事録作成者の氏名
- 議長及び出席した役員(または議事録署名人)の署名または記名押印
参照:特定非営利活動促進法施行条例などで定められている場合がありますので、所轄庁の手引きを確認してください。例えば、東京都生活文化スポーツ局のウェブサイトで「NPO法人 設立総会 議事録など
設立総会は、実際に社員が一堂に会して開催するのが原則ですが、書面や電磁的方法(メールなど)による議決権行使を認める場合は、その旨を定款に規定しておく必要があります。議事録は、所轄庁への認証申請時に提出するだけでなく、法人成立後も大切に保管しなければならない重要な書類です。
ステップ3:所轄庁への認証申請|審査期間と対応のポイント
必要な書類が一通り揃ったら、いよいよ所轄庁(主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事または指定都市の長)へNPO法人の設立認証申請を行います。このステップでは、提出された書類が法令に適合しているか、NPO法人として適切に活動できるかなどが審査されます。
ここでは、申請の流れ、審査期間、そして申請後の対応のポイントについて解説します。
3-1. 申請書類の提出先と流れ|都道府県か指定都市か
NPO法人の設立認証申請を行う「所轄庁」は、その法人の主たる事務所がどこにあるかによって決まります。
- 一つの都道府県内のみに事務所を設置する場合: その事務所がある都道府県の知事が所轄庁となります。
- 一つの指定都市の区域内のみに事務所を設置する場合: その指定都市の長が所轄庁となります。
- 複数の都道府県に事務所を設置する場合: 内閣総理大臣(実際の手続きは内閣府NPOホームページを通じて行われることが多い)が所轄庁となるケースもありますが、通常は主たる事務所のある都道府県知事となります。詳しくは内閣府や該当都道府県にご確認ください。
(出典:特定非営利活動促進法 第九条 e-Gov法令検索 特定非営利活動促進法)
申請書類は、所轄庁の担当窓口(NPO法人担当課など)へ持参するか、郵送で提出します。事前に所轄庁のウェブサイトで提出方法や必要な部数などを確認しておきましょう。多くの自治体では、申請前に事前相談を受け付けており、書類の不備を未然に防ぐために活用することをおすすめします。
申請書類が受理されると、所轄庁は申請があった旨や申請書類の一部(定款、役員名簿、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書など)を一定期間(通常1ヶ月間)公告し、一般の人が閲覧できるようにします。これを「縦覧(じゅうらん)」と言います。(出典:特定非営利活動促進法 第十条第二項)
3-2. 認証審査の期間はどれくらい?|平均と最短ケース
所轄庁は、縦覧期間が終了した後、原則として2ヶ月以内に認証または不認証の決定を行います。(出典:特定非営利活動促進法 第十二条第一項) つまり、申請書類が受理されてから認証(または不認証)の決定が下りるまでの標準的な審査期間は、縦覧期間(約1ヶ月)と審査期間(約2ヶ月)を合わせて、約3ヶ月程度となります。
ただし、これは書類に不備がなく、スムーズに審査が進んだ場合の目安です。書類に不備があれば、その修正に時間がかかり、結果として認証までの期間が延びる可能性があります。NPO法人の設立スケジュールを立てる際には、この審査期間を考慮に入れ、余裕を持った計画を立てることが重要です。
3-3. 書類不備の指摘と修正対応|慌てず確実に対処する方法
認証申請後、所轄庁の審査過程で書類の記載漏れや法令との不整合などの不備が発見された場合、所轄庁から補正(修正)を求められることがあります。これは決して珍しいことではなく、むしろ多くの設立準備者が経験することです。
不備の指摘があった場合は、まず指摘内容を正確に理解することが大切です。何が問題で、どのように修正すれば良いのか、不明な点があれば所轄庁の担当者に遠慮なく質問しましょう。
修正作業は、迅速かつ正確に行う必要があります。修正箇所によっては、再度、発起人間で話し合いが必要になったり、設立総会での再決議が必要になったりするケースも考えられます。慌てずに、しかし期限を守って対応することが、スムーズな認証取得につながります。
この段階でのやり取りを通じて、所轄庁の担当者と良好なコミュニケーションを築いておくことも、今後の法人運営において有益となるでしょう。
ステップ4:設立登記手続き|法人格取得の最終ステップ
所轄庁から無事に「認証書」が交付されたら、NPO法人設立の最終ステップである設立登記手続きに移ります。この登記手続きを完了することで、NPO法人は正式に法人格を取得し、法的に活動を開始できるようになります。
登記は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で行います。認証書の到達した日から2週間以内に登記申請を行う必要があるため、速やかに準備を進めましょう。(出典:特定非営利活動促進法 第十三条第一項)
4-1. 登記申請に必要な書類一覧
NPO法人の設立登記申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 特定非営利活動法人設立登記申請書
- 定款(認証を受けたもの)
- 認証書(所轄庁から交付されたもの)
- 代表権を有する者の資格を証する書面(理事の互選書など、代表理事の選任を証明する書類)
- 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本(認証申請時に提出したもの)
- 資産の総額を証する書面(設立当初の財産目録など)
- 印鑑届出書(法人の実印を登録するため)
(参照:法務局ウェブサイト 「特定非営利活動法人の設立の登記申請手続」などで検索。例えば、法務局 商業・法人登記のページから関連情報を探せます。)
これらの書類は、法務局のウェブサイトで様式や記載例が提供されていることが多いので、参考にしながら正確に作成しましょう。特に「資産の総額を証する書面」として提出する財産目録は、設立当初の法人の財産状況を示す重要な書類です。法人印鑑については、「【法人オーナー必見】会社設立・運営に必須の印鑑を徹底解説!種類・選び方・作成から電子印鑑まで」の記事も参考になるでしょう。
4-2. 法務局での登記申請の流れと注意点
作成した登記申請書類一式を、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に提出します。提出方法は、窓口持参または郵送です。
法務局では、提出された書類に形式的な不備がないか審査が行われます。問題がなければ、申請からおおむね1週間から2週間程度で登記が完了します。登記が完了すると、NPO法人は法人格を取得し、登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書を取得できるようになります。
注意点としては、前述の通り、認証書の到達日から2週間以内という登記申請期限を厳守することです。この期限を過ぎてしまうと、認証が無効になってしまう可能性もあるため、計画的に準備を進めましょう。
4-3. 登記完了後にやるべきこと|税務署等への届出
NPO法人の設立登記が完了し、法人格を取得したら、それで全てが終わりではありません。速やかに行うべき手続きがいくつかあります。
- 税務署への届出: 法人設立届出書や青色申告の承認申請書などを提出します。
- 都道府県税事務所・市区町村役場への届出: 法人住民税や法人事業税に関する届出を行います。
- 労働保険・社会保険の手続き: 従業員を雇用する場合は、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所で手続きが必要です。
- 銀行口座の開設: 法人名義の銀行口座を開設します。法人口座の開設については、「ネット銀行は法人口座開設の審査が甘い?メガバンクよりも簡単に作れる?審査基準を徹底比較!おすすめネット銀行とその理由も」のような記事も参考になるかもしれません。
これらの手続きは、今後の法人運営をスムーズに行うために不可欠です。設立登記が完了したら、早めに済ませておきましょう。
開業届の提出については、個人事業主向けの情報ですが「開業届の作成・提出はfreee開業とマネーフォワードクラウド開業届のどちらがオススメ?特徴を比較しました」も、手続きのイメージを掴むのに役立つかもしれません。

以上が、NPO法人設立のロードマップです。各ステップで求められること、注意すべき点を理解し、一つ一つ着実に進めていくことが、「難しい」を乗り越えるための鍵となります。
NPO法人設立|自分でやる?専門家(行政書士)に依頼する?徹底比較
NPO法人の設立手続きは、ここまで見てきたように、多くのステップと専門的な知識を要します。そこで多くの方が悩むのが、「これらの手続きを自分自身で行うべきか、それとも行政書士などの専門家に依頼すべきか」という点でしょう。
どちらの選択にもメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いとは言えません。ここでは、それぞれのケースについて、費用、期間、手間、確実性といった観点から徹底比較し、あなたが最適な選択をするための判断材料を提供します。
まずは、それぞれの選択肢における主な特徴を比較表で見てみましょう。
比較項目 | 自分で設立する場合 | 専門家(行政書士など)に依頼する場合 |
---|---|---|
費用 | 抑えられる(実費のみ) | 専門家への報酬が発生(数十万円程度) |
期間 | 長くなる傾向(学習・調査時間が必要) | 短縮できる可能性が高い |
手間・労力 | 非常にかかる | 大幅に削減できる |
専門知識 | 自身で習得する必要がある | 専門家の知識を活用できる |
確実性 | 書類不備や手続きミスのリスクあり | 高い(専門家が法令に基づき処理) |
ノウハウ | 設立ノウハウが身につく | 専門家に依存する形になる |
精神的負担 | 大きい(不安やプレッシャー) | 軽減される(安心感がある) |
この表を参考に、それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
ケース1:自分でNPO法人を設立する場合
時間と労力を惜しまず、設立プロセス自体を学びたい、費用をできる限り抑えたいという方にとっては、自分で設立手続きを行うという選択肢があります。
メリット|費用を抑え、設立ノウハウが身につく
自分でNPO法人を設立する最大のメリットは、専門家への依頼費用がかからないため、設立費用を大幅に抑えられる点です。発生するのは、住民票や印鑑証明書の取得費用、事務所関連費用(必要な場合)、交通費など、実費のみとなります。
また、設立手続きの全プロセスを自分自身で経験することで、NPO法人に関する法律や制度、手続きの流れに関する深い知識とノウハウが身につきます。これは、設立後の法人運営においても大いに役立つでしょう。一つ一つの壁を乗り越えて設立を達成した際の達成感も、何物にも代えがたいものがあります。
デメリット|膨大な時間と手間、書類不備のリスク
一方で、自分で設立する場合のデメリットは、膨大な時間と手間がかかることです。NPO法関連の法令や所轄庁の手引きを読み込み、多数の書類を正確に作成し、関係各所とのやり取りを行うには、相応の覚悟が必要です。本業がある方にとっては、時間的な制約が大きな壁となるでしょう。
また、専門知識がないまま手探りで進めると、書類の記載漏れや法令解釈の誤りなどから不備が生じ、認証までに通常よりも長い時間がかかったり、最悪の場合、不認証となったりするリスクも否定できません。何度も修正を繰り返すうちに、精神的に疲弊してしまう可能性もあります。
自分で設立する場合の費用内訳と期間の目安
自分でNPO法人を設立する場合にかかる費用の主な内訳と、期間の目安は以下の通りです。
費用内訳(実費のみの例):
- 住民票・印鑑証明書取得費用:数千円程度(役員の人数による)
- 事務所関連費用:ケースバイケース(自宅を事務所とする場合は僅少)
- 交通費・通信費:数千円~数万円程度(所轄庁や法務局への移動、郵送費など)
合計:数千円~数万円程度 (専門家報酬はかからない)
期間の目安:
- 準備期間(書類作成、人員集めなど):1ヶ月~数ヶ月
- 所轄庁への申請~認証:約3ヶ月~(書類の修正状況により変動)
- 登記手続き:約1週間~2週間
合計:最短でも4ヶ月~半年程度、長い場合は1年以上 かかることもあります。
「自分でやった」体験談から学ぶ|成功と失敗のポイント
インターネット上には、自分でNPO法人を設立した方の体験談ブログなどが存在します。そうした情報を参考にすることで、具体的な苦労話や、それをどう乗り越えたか、あるいはどのような点で失敗しやすかったか、といったリアルな情報を得ることができます。
成功のポイントとしては、事前の情報収集と計画性、所轄庁の担当者との良好なコミュニケーション、そして何よりも諦めない根気が挙げられることが多いようです。一方、失敗のポイントとしては、書類作成の甘さ、人員集めの遅れ、スケジュールの見込み違いなどが考えられます。
ケース2:専門家(行政書士など)に設立代行を依頼する場合
時間的な余裕がない、手続きの複雑さに不安がある、確実かつスムーズに設立したいという方にとっては、行政書士などの専門家に設立代行を依頼するという選択肢が有効です。
メリット|時間と手間を大幅削減、確実性の向上
専門家に依頼する最大のメリットは、設立にかかる時間と手間を大幅に削減できる点です。複雑な書類作成や所轄庁との折衝などを専門家が代行してくれるため、発起人は法人の目的や事業内容の検討といった本質的な部分に集中できます。
また、行政書士はNPO法人設立の専門家であり、最新の法令や実務に精通しています。そのため、書類不備のリスクを最小限に抑え、スムーズかつ確実に認証・登記まで進められる可能性が高まります。精神的な負担も大きく軽減され、安心して設立プロセスを任せられるでしょう。
デメリット|依頼費用が発生する
専門家に依頼する場合のデメリットは、当然ながら専門家への依頼費用(報酬)が発生することです。NPO法人の設立代行を行政書士に依頼する場合、報酬額は事務所や依頼内容によって異なりますが、一般的には15万円~30万円程度が相場とされています(別途、実費がかかる場合があります)。
設立資金に余裕がない場合は、この費用が負担となる可能性があります。
行政書士への依頼費用相場とサービス内容|どこまでやってくれる?
行政書士にNPO法人設立を依頼した場合の費用相場と、一般的なサービス内容は以下の通りです。
費用相場:
- 15万円~30万円程度(別途、実費数千円~数万円)
※ 事務所の方針、設立するNPO法人の規模や事業内容の複雑さ、依頼する業務範囲によって変動します。
一般的なサービス内容:
- 設立に関する相談、アドバイス
- 定款、事業計画書、設立趣旨書など、認証申請に必要な各種書類の作成または作成支援
- 所轄庁への認証申請手続きの代行
- 設立総会議事録の作成支援
- 法務局への設立登記申請書類の作成(登記申請自体は司法書士の業務範囲となる場合があります)
- 設立後の各種届出に関するアドバイス
どこまでの業務を依頼するかによって費用も変わってくるため、事前に複数の行政書士事務所に見積もりを取り、サービス内容を比較検討することが重要です。
信頼できる行政書士の選び方|失敗しないための5つのチェックポイント
NPO法人設立を成功させるためには、信頼できる行政書士を選ぶことが非常に重要です。以下の5つのポイントを参考に、慎重に選びましょう。
- NPO法人設立の実績が豊富か: NPO法人設立は特殊な手続きが多いため、経験豊富な行政書士を選びましょう。事務所のウェブサイトで実績を確認したり、直接問い合わせてみたりすると良いでしょう。
- コミュニケーションが取りやすいか: あなたの想いや疑問をしっかりと聞き、分かりやすく説明してくれるか。相性も大切です。
- 見積もりが明確で、サービス内容が具体的か: 何にどれくらいの費用がかかるのか、どこまでの業務を代行してくれるのか、書面で明確に示してくれる事務所を選びましょう。
- 設立後のサポート体制はあるか: 設立だけでなく、その後の運営に関する相談にも乗ってくれるかなど、長期的な視点でサポートしてくれる行政書士は心強い存在です。
- 親身になって相談に乗ってくれるか: あなたのNPO法人の理念や活動内容に共感し、成功を願ってくれるような、熱意のある行政書士を選びたいものです。
専門家を探すプラットフォームとして、例えば「ココナラ」のようなスキルマーケットで、NPO法人設立に強い行政書士を探してみるのも一つの方法です。多くの専門家が登録しており、実績や評価を確認しながら比較検討できます。
【ココナラ】
NPO法人設立の相談から書類作成代行まで、経験豊富な行政書士をオンラインで探せます。
最終的にどちらを選ぶかは、あなたの状況や価値観によって異なります。費用、時間、確実性、そして何よりも「自分たちの手でやり遂げたい」という想いなどを総合的に考慮し、後悔のない選択をしてください。
NPO法人設立の「難しい」を解消!よくある質問(FAQ)と専門家からの回答
NPO法人の設立に関して、多くの方が抱く疑問や不安は共通しているものです。ここでは、特に「難しい」と感じやすいポイントを中心に、よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。専門家の視点から、具体的かつ分かりやすく解説します。
Q1. NPO法人設立にかかる総費用は結局いくら?|実費と専門家報酬
A1. NPO法人設立にかかる総費用は、自分で設立手続きを行うか、専門家に依頼するかで大きく異なります。
まず、自分で設立手続きを行う場合の費用を考えてみましょう。
- 実費のみ: 株式会社の設立時に必要な登録免許税(最低でも6万円~)や定款認証手数料(約5万円)は、NPO法人の場合は原則としてかかりません。そのため、主な費用は、役員の住民票や印鑑証明書の取得費用(1通数百円×人数分)、事務所を借りる場合の初期費用(家賃、敷金など)、設立総会の会場費、書類の郵送費や交通費など、実質的な経費のみとなります。これらを合計しても、数千円から数万円程度で済むケースが多いでしょう。
次に、行政書士などの専門家に設立代行を依頼する場合の費用です。
- 専門家への報酬 + 実費: 専門家への報酬は、依頼する事務所や業務範囲によって異なりますが、一般的には15万円~30万円程度が相場です。これに加えて、前述の実費がかかります。したがって、総費用としては、おおよそ16万円~35万円程度を見込んでおくと良いでしょう。
費用シミュレーション(概算)
項目 | 自分で設立する場合 | 専門家に依頼する場合 | 備考 |
---|---|---|---|
登録免許税 | 0円 | 0円 | NPO法人は非課税 |
定款認証手数料 | 0円 | 0円 | 原則不要 |
実費(書類取得費など) | 数千円~ | 数千円~ | 住民票、印鑑証明書など |
小計(実費) | 数千円~数万円 | 数千円~数万円 | |
専門家報酬 | 0円 | 15万円~30万円 | 行政書士への依頼費用(目安) |
合計 | 数千円~数万円 | 16万円~35万円程度 |
※ 上記はあくまで一般的な目安であり、個別のケースによって金額は変動します。
専門家に依頼する場合は、事前に複数の事務所から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。
Q2. NPO法人設立まで最短でどのくらいの期間が必要?
A2. NPO法人の設立までにかかる期間は、準備の進捗状況や所轄庁の審査状況によって大きく変動しますが、全てがスムーズに進んだ場合でも、最短で約4ヶ月程度は見ておく必要があるでしょう。
内訳としては、以下のようなイメージです。
- 設立準備期間(書類作成、人員集めなど): 発起人の熱意や協力体制にもよりますが、集中して取り組めば1ヶ月~2ヶ月程度で完了できる可能性もあります。しかし、じっくりと理念を固めたり、仲間集めに時間をかけたりする場合は、それ以上かかることもあります。
- 所轄庁への申請~認証までの期間: 申請書類が受理されてから認証(または不認証)の決定が下りるまでの標準処理期間は、縦覧期間(約1ヶ月)を含めて約3ヶ月程度です。ただし、これは書類に不備がない場合の目安です。
- 設立登記手続き期間: 認証書が交付されてから法務局へ登記申請を行い、登記が完了するまでには、通常1週間~2週間程度かかります。
したがって、合計すると最短でも4ヶ月程度は必要となります。実際には、書類の修正や関係者との調整などで時間がかかり、半年から1年程度を要するケースも少なくありません。
設立スケジュールを立てる際は、各ステップに要する期間を多めに見積もり、余裕を持った計画を立てることが肝心です。
Q3. NPO法人の役員や社員は誰でもなれる?|欠格事由と注意点
A3. NPO法人の役員(理事・監事)や社員(正会員など)になるためには、一定の要件があり、誰でもなれるわけではありません。特に役員には「欠格事由(けっかくじゆう)」という、役員になれない条件が法律で定められています。
役員の欠格事由の主なものとしては、以下のようなものがあります。
- 成年被後見人又は被保佐人
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 特定非営利活動促進法や暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定等に違反したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
(出典:特定非営利活動促進法 第二十条 e-Gov法令検索 特定非営利活動促進法)
また、役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等内の親族が1人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等内の親族が役員の総数の3分の1を超えて含まれてはならないという制限(親族制限)もあります。(出典:特定非営利活動促進法 第二十一条)
社員については、法律上の明確な欠格事由はありませんが、法人の定款で社員の資格に関する定めを置くことができます(例:法人の目的に賛同する個人及び団体など)。
Q4. NPO法人は一人では設立できないの?|10人集めるコツは?
A4. 残念ながら、NPO法人は一人で設立することはできません。法律で、役員として理事が3人以上、監事が1人以上、そして社員が10人以上必要と定められています。
つまり、最低でも10人の仲間を集める必要があります。これがNPO法人設立の大きなハードルの一つと感じる方も多いでしょう。
10人集めるコツとしては、以下のような点が挙げられます。
- まずは身近な人から: 家族、友人、知人など、あなたの想いを理解し、応援してくれる可能性のある人に声をかけてみましょう。
- 同じ問題意識を持つ人を探す: 解決したい社会課題に関心を持つ人々が集まるイベントやコミュニティに参加したり、SNSで情報発信したりするのも有効です。
- 既存の団体や専門家に相談する: 地域のNPO支援センターや、NPOの活動に理解のある専門家(行政書士など)に相談し、アドバイスや協力を求めるのも良いでしょう。
- 設立準備の段階から積極的に情報発信する: ブログやSNS、説明会などを通じて、設立しようとしているNPO法人の目的や活動内容を広く伝え、共感を広げることが大切です。
- 小さな役割からお願いする: 最初から重い責任を伴う役員をお願いするのではなく、まずは活動を応援してくれる社員(正会員)として参加してもらうなど、ハードルを下げる工夫も有効です。
時間はかかるかもしれませんが、熱意を持って語りかければ、きっとあなたの想いに共感してくれる仲間が見つかるはずです。
Q5. 設立後のNPO法人の運営は本当に大変?|会計処理や税金はどうなる?
A5. NPO法人の運営は、確かに一定の手間や責任が伴いますが、「大変すぎる」と一概に言えるわけではありません。ポイントを押さえて、適切に対応すれば、十分に運営していくことは可能です。
会計処理については、NPO法人は「NPO法人会計基準」に則った会計処理を行う必要があります。これは、営利企業とは異なる非営利組織特有の会計ルールであり、慣れないうちは難しく感じるかもしれません。しかし、市販のNPO法人向け会計ソフトを利用したり、税理士や会計に詳しい専門家のサポートを受けたりすることで、負担を軽減できます。
税金については、NPO法人は法人税法上の「公益法人等」として扱われ、収益事業から生じた所得に対してのみ法人税が課税されます。特定非営利活動に係る事業(会費、寄付金、補助金など)から得た収入には、原則として法人税はかかりません。ただし、法人住民税の均等割は、収益事業の有無にかかわらず課税されるのが一般的です(自治体によっては減免制度がある場合もあります)。
(参照:国税庁ウェブサイト 「NPO法人の税務」などで検索)
運営を楽にするためのヒントとしては、以下のようなものが考えられます。
- 会計ソフトの導入: NPO法人向けの会計ソフトを活用し、日々の記帳を効率化する。
- 専門家の活用: 税理士や会計士、行政書士など、NPO法人の運営に詳しい専門家に相談し、適切なアドバイスやサポートを受ける。
- ITツールの活用: 会員管理システム、コミュニケーションツール、タスク管理ツールなどを導入し、事務作業を効率化する。
- ボランティアやプロボノの活用: 専門的なスキルを持つボランティアやプロボノ(専門知識やスキルを活かしたボランティア活動)の協力を得る。
- 情報公開の徹底: 活動内容や財務状況を積極的に公開し、透明性を高めることで、支援者や地域社会からの信頼を得る。
設立後の運営については、事前にしっかりと計画を立て、必要なサポート体制を整えておくことが重要です。
Q6. NPO法人設立で失敗しないために最も注意すべき点は?
A6. NPO法人設立で失敗しないために最も注意すべき点は、以下の2つに集約されると言えるでしょう。
- 目的の明確化と共有: 「何のためにNPO法人を設立するのか」「どのような社会を実現したいのか」という目的を徹底的に明確にし、発起人や役員、社員となるメンバー全員で深く共有することが最も重要です。目的が曖昧だったり、メンバー間で認識がズレていたりすると、設立準備の段階で意見がまとまらず頓挫したり、設立後も活動の方向性が定まらず空中分解したりするリスクがあります。
- 継続的な運営体制の構築を見据えること: NPO法人の設立はゴールではなく、あくまでスタートです。設立手続きの大変さに目を奪われがちですが、それ以上に、設立後にどのように活動を継続し、発展させていくのかという視点が不可欠です。資金調達、人材確保、事業の企画・実行、情報発信、事務局機能の維持など、持続可能な運営体制を設立準備の段階から具体的に検討しておく必要があります。「仕事がない・途切れた個人事業主が取るべき対応策とは?仕事の取り方がわかる!」のような記事で触れられている事業継続の視点は、NPO法人運営にも通じる部分があります。
これらに加えて、法律や制度を正しく理解し、手続きを丁寧に進めること、そして何よりも社会貢献への熱意を持ち続けることが、成功への鍵となります。
Q7. NPO法人と一般社団法人の違いは?どっちが設立しやすい?
A7. NPO法人と一般社団法人は、どちらも非営利型の法人ですが、根拠法、設立要件、事業内容の制約、監督官庁などに違いがあります。どちらが設立しやすいかは、何を基準にするか(手続きの簡便さ、設立期間、人員要件など)によって一概には言えません。
以下に主な違いをまとめます。
項目 | NPO法人(特定非営利活動法人) | 一般社団法人 |
---|---|---|
根拠法 | 特定非営利活動促進法 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 |
設立要件(人員) | 理事3名以上、監事1名以上、社員10名以上 | 社員2名以上(理事は1名以上でOK、監事は任意) |
設立手続き | 所轄庁の「認証」が必要(審査あり、時間もかかる) | 公証人の「定款認証」と法務局への「登記」のみ(実質的な審査はなし) |
設立期間目安 | 認証に約3ヶ月+準備・登記 | 最短1~2週間程度(書類準備が整えば) |
事業内容 | 特定非営利活動促進法に定める20分野の活動が主たる目的。収益事業も可能だが、非営利活動に充てる必要あり。 | 事業内容に特段の制約なし(公益性も問われない)。剰余金の分配は不可。 |
監督官庁 | 所轄庁(都道府県知事または指定都市の長など) | 原則としてなし(公益社団法人の場合は行政庁の監督あり) |
税制優遇 | 認定NPO法人になると税制上の優遇措置が大きい。通常のNPO法人でも収益事業以外は非課税。 | 非営利型一般社団法人(一定の要件あり)は収益事業以外非課税。公益社団法人はさらに優遇。 |
情報公開 | 事業報告書等を所轄庁に提出し、市民に公開する義務あり。透明性が高い。 | 計算書類等の備え置き・閲覧義務はあるが、NPO法人ほど厳格ではない。 |
設立のしやすさという観点では:
- 手続きの簡便さ・期間の短さ: 一般社団法人のほうが、所轄庁の認証が不要なため、手続きは比較的シンプルで、設立までの期間も短い傾向にあります。
- 人員要件: 一般社団法人のほうが、最低2名の社員で設立できるため、人員集めのハードルは低いと言えます。
しかし、活動の目的や内容、求める社会的信用、税制優遇などを考慮すると、NPO法人のほうが適しているケースも多くあります。 例えば、広く市民からの寄付を集めたい、行政との協働事業を行いたいといった場合には、NPO法人のほうが有利な場合があります。
どちらの法人格を選ぶかは、団体の目的や活動内容、将来の展望などを総合的に考慮して慎重に判断する必要があります。専門家に相談し、それぞれのメリット・デメリットを比較検討することをおすすめします。
NPO法人設立のその先へ|「難しい」を乗り越えた後の未来のために
NPO法人の設立は、確かに多くの困難を伴うかもしれません。しかし、その「難しさ」を乗り越えた先には、あなたの社会貢献への想いを具現化し、より大きなインパクトを生み出すための素晴らしい未来が待っています。ここでは、設立後の活動をより豊かに、そして持続可能なものにするための視点を提供します。
NPO法人設立はゴールではなくスタート|継続的な活動と発展のために
NPO法人を無事に設立できたとしても、それは決してゴールではありません。むしろ、本格的な活動のスタートラインに立ったに過ぎないのです。設立の喜びも束の間、日々の運営、事業の実施、資金調達、人材育成、情報発信など、やるべきことは山積みです。
設立時に掲げた目的を達成し、社会に貢献し続けるためには、継続的な活動と組織の発展が不可欠です。そのためには、以下の点が重要になります。
設立後の事業報告と情報公開の義務
NPO法人は、毎事業年度終了後3ヶ月以内に、事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録などを所轄庁に提出する義務があります。これらの書類は、所轄庁を通じて市民にも公開され、法人の活動の透明性を担保するものです。(出典:特定非営利活動促進法 第二十八条、第二十九条)
この情報公開は、単なる義務ではなく、支援者や地域社会からの信頼を得るための重要な機会と捉えるべきです。活動の成果や課題を誠実に報告し、共感を広げていくことが、NPO法人の持続的な発展につながります。
資金調達の方法|助成金・補助金・寄付の集め方
NPO法人の活動を継続するためには、安定した資金調達が不可欠です。主な資金調達の方法としては、以下のようなものがあります。
- 会費: 社員(会員)から徴収する会費。安定的な収入源となります。
- 寄付金: 個人や企業からの寄付。活動の趣旨に賛同してくれる支援者を増やすことが重要です。
- 助成金・補助金: 国や地方自治体、民間の助成財団などが提供する助成金や補助金。申請には手間がかかりますが、まとまった資金を得られる可能性があります。「補助金や助成金の相談は誰にすればよい?探し方やポイントを解説|使いみち不問の補助金紹介も」の記事も参考に、情報収集を積極的に行いましょう。
- 事業収入: NPO法人が行うセミナー開催、物品販売などの収益事業からの収入。ただし、得た利益は非営利活動に充てる必要があります。
- クラウドファンディング: インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法。共感を呼ぶプロジェクトを打ち出すことが成功の鍵です。
多様な資金調達手段を組み合わせ、財政基盤を強化していく努力が求められます。
NPO法人のメリットを最大限に活かす|社会的信用と税制優遇
NPO法人は、法人格を持つことで社会的な信用が高まり、様々な活動を展開しやすくなるというメリットがあります。例えば、行政や企業との契約、銀行口座の開設、不動産の登記などが法人名義で行えるようになります。
また、税制面でも一定の優遇措置が受けられます。特に、一定の要件を満たして「認定NPO法人」の認定を受けると、寄付者に対する税制優遇(寄付金控除)が適用されるため、寄付を集めやすくなるという大きなメリットがあります。(参照:内閣府NPOホームページ 「認定NPO法人制度」などで検索)
認定NPO法人を目指す道とそのメリット
認定NPO法人になるためには、パブリック・サポート・テスト(PST:広く市民からの支持を得ているかを測る基準)をはじめとする厳しい基準をクリアする必要があります。簡単な道のりではありませんが、認定を受けることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 寄付者(個人・法人)が税制上の優遇措置を受けられるため、寄付が集まりやすくなる。
- 社会的信用が一層高まり、活動の幅が広がる。
- 組織運営の透明性や適正性が客観的に認められる。
NPO法人としてステップアップを目指すのであれば、認定NPO法人の取得も視野に入れて活動計画を立てると良いでしょう。
もし設立が「本当に難しい」と感じたら|頼れる相談窓口と支援機関
ここまでNPO法人設立の道のりを見てきましたが、それでも「やはり自分たちだけでは難しい」と感じることもあるかもしれません。そんな時は、決して一人で抱え込まず、頼れる相談窓口や支援機関を積極的に活用しましょう。
各都道府県のNPO支援センター
多くの都道府県や主要都市には、NPO法人の設立や運営を支援するための「NPO支援センター(名称は地域によって異なります)」が設置されています。これらのセンターでは、専門の相談員が無料で相談に応じてくれたり、設立に必要な情報提供やセミナー開催などを行っていたりします。まずは、お近くのNPO支援センターに問い合わせてみることをお勧めします。
NPO法人設立に強い専門家ネットワーク
行政書士や税理士、コンサルタントの中には、NPO法人の設立や運営支援を専門的に行っている人もいます。こうした専門家は、法的な手続きの代行だけでなく、事業計画の策定や資金調達、組織運営に関するアドバイスなど、幅広いサポートを提供してくれます。
専門家を選ぶ際は、単に手続きを代行してくれるだけでなく、あなたのNPO法人の理念や活動内容に共感し、共に汗を流してくれるような、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
まとめ:NPO法人設立の「難しさ」を理解し、あなたの想いを実現する第一歩を踏み出そう
NPO法人の設立は、確かに簡単な道のりではないかもしれません。「手続きが複雑そう」「人員集めが大変そう」「費用や時間がかかりそう」といった不安を感じるのは自然なことです。しかし、本記事を通じて、その「難しさ」の具体的な内容と、それを乗り越えるための道筋が見えてきたのではないでしょうか。
本記事でお伝えしてきたポイントを、最後にもう一度確認しましょう。
- NPO法人設立が「難しい」とされる背景には、手続きの多さ、専門知識の必要性、人員要件、時間と費用、そして設立後の運営への懸念といった具体的な要因があること。
- しかし、それらの課題は、事前の周到な準備、正確な情報収集、ステップごとの着実な対応、そして時には専門家のサポートを活用することで、一つ一つクリアできること。
- 設立にかかる費用や期間は、自分で進めるか専門家に依頼するかで大きく変わるものの、事前に把握し計画することで、現実的な目標設定が可能になること。
- 設立はゴールではなく、その後の継続的な活動と発展を見据えた運営体制の構築が、NPO法人としての使命を果たす上で何よりも重要であること。
- NPO法人という形態は、社会的な信用を得やすく、税制上の優遇措置も期待できるなど、あなたの社会貢献活動を力強く後押しする大きな可能性を秘めていること。
「難しい」という言葉の裏には、それを乗り越えた時の大きな達成感と、社会に貢献できるという計り知れないやりがいが待っています。NPO法人の設立は、あなたの熱い想いを社会に届け、具体的な変化を生み出すための、まさに最初の扉です。
この記事が、あなたがその扉を開けるための、ほんの少しの勇気と具体的な知識を提供できたのであれば幸いです。設立準備で困難に直面した時は、いつでもこの記事に戻ってきてください。そして、あなたの素晴らしい活動が花開くことを心から願っています。
さあ、次はあなたの番です。その尊い一歩を踏み出しましょう!